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第1回日本緩和医療薬学会年会が20、21の両日、「緩和ケアにおける薬(病院)・薬(薬局)・学(大学)連携の実践」をテーマに、東京荏原の星薬科大学で開かれた。3月の学会設立後、初めての開催となった年会には、予想を上回る1260名が参加。緩和ケアに対する薬剤師の高い関心を改めて裏付ける格好となった。学会には、「緩和薬物療法認定薬剤師」の教育・認定など課題が山積しており、チームの一員として薬剤師が認められるかどうか真価が問われるのはこれからだ。
癌薬物療法への関与は、薬剤師が専門性を発揮できる領域として早くから注目されてきた。既に癌薬物療法の専門薬剤師制度がスタートし、癌化学療法への積極的な関与が見られているが、緩和ケアチームの中では薬剤師の存在感は十分に発揮されてこなかった。
シンポジウム「緩和医療におけるこれからの薬剤師のあり方」では、医師の立場から橋爪隆弘氏(私立秋田総合病院外科、癌治療支援・緩和ケアチーム)が、緩和ケアに薬剤師は欠かせないとの認識を示しつつ、診療報酬上の緩和ケアチーム加算が薬剤師に認められていない点を指摘。「まだ臨床現場での薬剤師の働きが足りないのではないか」と、一層の積極的な活動を求めた。
その上で、薬剤師が緩和ケアに関わることで、薬剤の採用が早くなる、ケアが変わってくるなどのメリットを挙げ、「薬学の専門家としての意見を述べてほしい」と要望。「そのためには、医療スタッフとしての自覚を持ち、専門性を発揮できる環境を自ら作らないといけない」と問題を提起。現場でコミュニケーションを取ることから始めるべきとの考えを示した。
橋爪氏らのアンケート調査では、癌疼痛治療で困っていることの上位に「疼痛評価ができていない」「(患者が)痛みを我慢している」との回答が挙がった。それだけに、薬剤師には癌疼痛治療・症状緩和に関する正確な知識を持ち、適切な服薬指導を行い、治療に積極的に参画することが求められており、橋爪氏は「緩和ケアの主体である薬物治療のコーディネーター役になってほしい」と呼びかけた。
小西洋子氏(京都府立医科大学病院薬剤部・疼痛緩和医療部)からは、緩和ケアに携わる薬剤師業務の実際が紹介された。同院で緩和医療に携わっている薬剤師は3名で、チームの中で医薬品情報の提供、処方設計の支援、医療用麻薬の適正使用支援、副作用支援などを行っている。
ただ、院内のチームでは解決できない問題も生じることから、2000年に日本緩和医療学会参加薬剤師によるメーリングリストが発足した。現在全国で35名が参加しているが、その活動の中からフェンタニルパッチ使用実態調査の学会発表など、精力的な取り組みが成果として上がってきている。
同学会の設立は、緩和ケアに携わる専門薬剤師の養成が大きな目的だが小西氏は、「いまの専門薬剤師制度では、小さい施設の薬剤師が論文や症例数を達成するのは厳しく、限られた人しか取得できない」と現行制度の問題点を指摘。「全体のレベルアップを図り、施設間格差を是正するためにも、論文、症例数が選択可能な制度を」と述べ、同学会が進める認定薬剤師制度に注文を付けた。
次回の第2回年会は、同学会副理事長の加賀谷肇氏(済生会横浜市南部病院薬剤部長)を年会長に、08年10月18、19の両日、横浜市のパシフィコで開催される。
- 「日本緩和医療薬学会」が発足
2007年03月27日