政府の経済財政諮問会議は17日、社会保障に対する財源確保策の検討を始めた。
内閣府がまとめた社会保障制度を維持するための試算によると、現在の給付水準を維持した場合、2025年には支え手1人当たりの負担を約3割増やさなければならない。また、現在の負担水準を維持した場合、高齢者1人当たりの給付費は医療で2割強、介護で4割弱を削減しなければならない。必要な増税額を全て消費税で賄う場合、税率は概ね10%以上という計算になる。
諮問会議は「社会保障と税は一体的に議論する」方針。今回がその一回目。同会議は、できる限り歳出削減を徹底すると共に経済成長によって増収を図るとし、増税論議は避けてきた。今回、増税額を明示したことで、転換点に立ったといえそうだ。
試算によると、債務残高GDP比を上昇させずに社会保障制度を維持するためには、11年度までの歳出削減を計画通り(14.3兆円削減、社会保障関連費1.1兆円=国庫負担分)進めても、経済成長(名目3.2%または2.1%)によって25年度の増税必要額は8.2兆円028.7兆円になる。消費税に換算して3011%の引き上げが必要になる計算だ。
福田康夫首相は、「問題を先送りすれば、さらに選択肢は厳しいものになる。国民にも分かりやすい議論を早急に積み重ねていく必要がある」と、より分かりやすい選択肢を示すよう指示した。
増税論議を避けてきた中で、「増税必要額」を明示して議論したことについて、大田弘子経済財政担当相は終了後の会見で「国民に対する選択肢だから。なるべく分かりやすく示したつもりだ。これを議論のスタート地点として、安心と持続のための知恵を絞り、国民が選択できるようにしたい」と狙いを説明した。
また、歳出削減路線を前提としつつ、成長率によって負担額が大きく変わることから「成長力をつけることが重要。それによって負担額は大きく変わる。成長力をつけないとこれからの高齢化は乗り切れない」と語った。
今回の試算では、歳出削減と経済成長も共に必要であることが示された格好。しかし、与党内では歳出削減には抵抗感も出てきており、今回の諮問会議の動きで増税論議が強まりそうな気配だ。