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理化学研究所と凸版印刷は、一塩基多型(SNP)の解析受託や解析装置の開発を行う「株式会社理研ジェネシス」を設立した。理研の研究活動の一部を分社化し、民営化するのは今回が初めてのことで、民営化により、より早い事業展開を図る。来年4月から本格的に事業を開始する。
同社は15日に東京都台東区に設立された。資本金は2000万円、凸版が87・5%、理研ベンチャーキャピタル(VC)が12・5%を出資。社長には、凸版ライフサイエンス事業推進部長の塚原祐輔氏が就任した。社員は25人程度でスタートする。
同社は、理研遺伝子多型研究センターで培ったノウハウを活用し、SNP解析の受託、臨床現場で簡単に利用できる小型のSNP解析装置およびチップの製造、販売といった事業に取り組む。小型装置は、診断に利用可能な装置が国内にないため、早い上市を目指すとしている。
理研遺伝子多型研究センターでは、病気への罹患可能性や薬への感受性を左右する個人ごとに異なる遺伝子多型を効果的に判定する技術として「SNPタイピング技術」を2000年から独自に開発、発展させてきた。この技術は、複数の技術を高度にシステム化したもので、遺伝子多型の判定に必要な一連の作業を高精度・高効率で統合的に行うことができる。
SNPタイピング技術は、遺伝子レベルで病気の原因を解析し、個々人の体質に合った治療法や創薬研究開発を行うファーマコゲノミクスの研究基盤となるもので、それらの事業を進めることにより、理研の解析技術を普及させ、オーダーメイド医療の実現を加速させることができると判断した。
理研では、新会社設立にはリスクが生じる上、海外試薬メーカーとの交渉や厚生労働省への申請などを理研単独で行うことが難しいと判断。2004年からオーダーメイド医療の実現を目指して共同研究を行い、特許の共同出願などの実績がある凸版印刷を事業パートナーに選定。4日に理研VCを加えた三者間で覚書を締結し、新会社の設立となった。
理研の大熊健司理事は、「良いパートナーに恵まれた。共同研究を進める上で同じ方向を目指す相手に成果を渡すのは、研究成果を生かす最良の方策」と語り、産業界と連携して理研のアクティビティを企業化する試みが、新たな事業モデルになることへの期待感を示した。