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中堅ジェネリック(GE)メーカーの共和薬品工業(本社大阪市、社長渡辺健二氏)は11日、インド6番手のGEメーカーであるルピンに株式の過半数を売却すると発表した。国内GE医薬品市場の急成長が見込まれる中、より多くのシェアを短期間で獲得しリーディングカンパニーになるには、単独での取り組みでは難しいと判断。充実した品揃え、低コストの製造体制に加え資金力も有し、日本市場への本格参入を狙っていたルピンの傘下に入ることを決断した。当面は、社名は継続され、取締役も大幅な変更はない見通し。18に開催される株主総会で新たな取締役が決定し、具体的な事業戦略が年内にまとめられる予定だ。
インド系企業による国内GEメーカーの買収は、今年4月のザイダスグループによる日本ユニバーサル薬品の買収に続き2社目。
同日、共和薬品工業本社で開かれた記者会見に代表取締役副社長の杉浦健氏が出席し、経緯を説明した。
国策としてGE医薬品の使用が促進され、数年で1兆円の市場規模に成長すると期待される中、杉浦氏は「いち早くどこよりもシェアを獲得し、リーディングカンパニーになっていくかが各社共通の課題になっている。陣取り合戦になっている」と解説。「305年かけてゆっくりという悠長な話では決してない。時間との勝負」と述べ、それを実現するためルピンの傘下に入る選択をしたと話した。
また、「共和薬品工業が財務的に切迫しているとか、売り上げが落ち込んでいるとかいうことではない」と話し、あくまでも戦略的な株式売却であることを強調した。
ルピンについては、[1]研究開発に注力し品揃えが豊富[2]原材料の調達も含めグローバルに展開している[3]原薬から一貫生産できるなど低コストの製造体制を持っている‐‐の3点を評価。両社は2005年に協力契約を交わし数品目の共同開発を進めていたが、さらに関係を強化するため、買収を受け入れたと説明した。
売却する株式の割合は、半数以上という点では合意しているが、詳細はまだ調整中。譲渡金額は100億円以内になる予定。
18日の株主総会では、ルピン側から取締役を迎え入れるなど、新たな経営陣が選出される予定だ。「日本のオペレーションを優先させる考えがルピンにあり、そうびっくりするような大きな変化はないと思う」と杉浦氏は語った。具体的な事業展開の方針は、新経営陣が年内にも固める見通しだ。
同社は96年から精神科領域に特化した戦略を展開してきた。それを主軸として継続、その上でルピンが保有する製品群を日本市場に投入するなどし、他領域の拡大を図ると見られる。
ルピンが日本市場の攻略にどれだけの資金を投じるのか、共和薬品工業だけでなく他のGEメーカーなどを買収し、販売体制の拡充を図るのかなどは、現段階では明らかになっていない。
共和薬品工業の07年3月期の売上高は75億円。国内GEメーカーの10位前後に位置している。従業員は240人。MR数は約60人。
ルピンは、抗結核薬、セファロスポリン、循環器系、中枢神経系などの領域に強いインド・ムンバイに本社を置くGEメーカー。07年3月期の売上高は約589億円。アメリカなど先進国への製剤輸出額は約96億円。従業員は約5500人以上。インド国内に6工場を有しFDAの認定を受けている。
◇武田厚労省医政局経済課長コメント
後発品市場が伸びていく中で、優良な製品を提供できる経営が安定した大手の企業の成長が必要であり、今回の動きもその方向に向かっていると理解している。ルピンの方には、日本のマーケット、ビジネス環境を尊重し、後発品の健全な発展をお願いした。
◇澤井医薬協会長コメント
国の方針で掲げられた、5年以内に30%以上のシェアというGE医薬品の数値目標に向け、各社は設備や研究開発への投資を必要としている。安定供給のみならず品質や情報面での要求もあり、必要な資金は急増している。
こうした背景のもと共和薬品工業は、資金面の応援を受けさらに飛躍するための選択をしたと理解している。30%の目標を達成するためにいいことだと思う。
日本の薬価制度や承認審査は海外に比べ、GEメーカーに厳しい。それが単独では成長を果たせない遠因ではないか。
こうした再編は今後、増えていくだろう。内資、外資と区別する時代ではない。いいものを安く提供する企業であれば、いいのではないか。ただ、全てが外資系で占められてしまうと、国内の工場が閉鎖され、地域産業の空洞化につながることを懸念している。
- インドのザイダスグループがGE市場に参入
2006年09月06日