レギュラトリーT細胞は自己反応性T細胞を抑制することから、その活性を抑えることで抗腫瘍活性を高めることができないかと研究が進められてきた。その一つがケモカイン受容体の一つであるCCR4を標的とした治療法。急性T細胞性白血病・リンパ腫(ATLL)細胞の周辺などには、CCR4を高発現したレギュラトリーT細胞が集積していることが確認されている。横浜市で開かれた第66回日本癌学会学術総会では、そうしたCCR4を狙ったヒト化抗CCR4抗体「KW-0761」のATLL患者を対象とした臨床成績が、石田高司氏(名古屋市立大学医学研究科腫瘍免疫内科)から報告された。現在、国内でKW-0761の治験も進行中だ。
ATLLは、HTLV-1のキャリアに発症する。感染したCD4陽性T細胞が数種類の突然変異で腫瘍化し、単クローン性に増殖したもの。正常なCD4陽性リンパ球量を減少させるだけでなく、患者の正常なCD4陽性リンパ球の活性も抑えるため、強力な免疫抑制反応を引き起こすことが知られている。ほとんどのATLLにCCR4が発現しており、CCR4陰性のATLLに比べて、CCR4陽性のATLLでは皮膚浸潤の割合が有意に強いことが確認されている。また、CCR4陽性T細胞が癌細胞の周辺に集まり、他のT細胞の活性を抑制することで、自己免疫による抗腫瘍活性を抑えていると考えられている。
そこで、CCR4を標的とした新規抗体療法薬として、抗体糖鎖中のフコース量を低減させることで、ナチュラルキラー細胞や単球などの白血球が抗体を介して癌細胞などを攻撃する「抗体依存性細胞障害(ADCC)」活性を向上させた抗体の研究が進められてきた。
その技術を用いて作成されたのが、マウス‐ヒトキメラ型抗CCR4抗体「KM2760」。ATLLモデルマウスを用いて検討したところでは、KM2760の投与によって、有意に腫瘍縮小が認められている。
それらの基礎研究を背景として、CCR4抗体を標的としたヒト化抗CCR4抗体のKW-0761が開発され、現在、協和発酵が国内で第I相試験を進めている。KW-0761も抗体のフコース量を減少させ、ADCC活性が高められている。
石田氏によると、急性のATLLの患者を対象に1週間ごとにKW-0761を0.01mg/kgの用量で計4回投与して再発率を評価したところ、投与2日目に末梢血中の癌細胞が消失。投与後1週目でわずかに癌細胞が増加したものの、2回目の投与で減少し、約1カ月間にわたり効果が持続した。一方で、通常の白血球や好中球、リンパ球の血中量が一時的に減少したものの、その後回復したことから、骨髄抑制が少ないことが示唆されている。
石田氏は、結果を踏まえ、抗CCR44抗体が「普遍的な癌治療薬として使えるだろう」と述べた。