救命救急医療の現場に薬剤師を配置する施設が増えていることが、日本臨床救急医学会多職種連携委員会小委員会薬剤師ワーキンググループ(WG)の調査で明らかになった。救命救急センターがある全国の209施設を対象にアンケート調査を実施したところ、回答があった137施設のうち54施設に薬剤師が配置されていた。十数年前の同様の調査では、その数は24施設(回答89施設)にとどまっており、施設数の増加に伴って、救急分野で活動する薬剤師の数も倍増した格好だ。ただ、依然として薬剤師未配置の施設も多いことから、WGでは今後、同学会への薬剤師の参加を促し、救命救急分野における薬剤師の存在意義をアピールしていきたい考えだ。
アンケート調査は、全国の救命救急センターと日本救急医学会指導医指定施設を対象に、昨年末から今年初頭にかけて実施された。センター長と薬剤部長に意見を求め、それぞれ117施設(60%)、137施設(65.6%)から回答があった。
「救命センターの担当薬剤師がいる」と回答したのは54施設。回答施設の39.4%を占めた。
「救命センターに薬剤師は必要だと思うか」との設問には、センター長の34.8%は「必ず必要」、44.4%は「必要」と回答し、薬剤部長は21.9%が「必ず必要」、60.6%が「必要」と回答した。両者とも80%前後が、救命救急領域における薬剤師の必要性を認識していた。
薬剤師に期待する役割としては、薬品管理だけでなく、処方チェック、医師への処方アドバイス、急性薬物中毒患者に関する情報提供、持参薬鑑別などの業務を望む意見が多かった。
このように約8割が薬剤師の必要性を認識しているにもかかわらず、実際の配置は約4割にとどまっている。薬剤師の配置を阻んでいる要因について、センター長や薬剤部長からは、「薬剤師の数が少なく、救命センターへの配置ができない」「救命センターの施設基準に薬剤師が含まれていない」「薬剤管理指導業務のような診療報酬が設定されていない」などが指摘された。
今回の結果について、WGの峯村純子氏(昭和大学病院薬剤部)は、「過去の調査に比べると、薬剤師を配置する施設の比率自体にはそれほど変化はなかったが、救急センターの数が以前に比べて増えており、それに伴って薬剤師の数も増加していることが分かった」と話している。