結核予防会結核研究所は、2005年に新たに発生した多剤耐性(MDR)結核患者数の推計値を発表した。05年1年間のMDR結核患者発生数は315人で、人口10万当たり0.247人と推計した。
推計は、「耐性結核の予防こそ、最良のMDR結核治療」との原則に基づいて行われている同研究所MDR結核治療プロジェクトの一環として実施されているもの。
推計値は、[1]初回MDR結核(最初からMDR結核菌に感染し発症した場合)[2]獲得MDR結核(最初はMDR結核ではない結核菌によって発症したが、その後何らかの理由で途中からMDR結核に移行した場合)――の2側面から分析された。
さらに、獲得MDR結核については、▽再発時獲得MDR結核▽治療失敗時獲得MDR――に分けても分析が行われた。
初回MDR結核患者数については、結核療法研究協議会(療研)が5年ごとに実施している調査と、結核予防会複十字病院のデータをもとに推計値を求めた。
この療研調査によれば、初回患者でMDRだった割合は、82年が0.9%、87年0.5%、92年0.3%、97年0.8%、02年0.7%と一定の傾向は認められず、11年間を単純平均すると0.64%の罹患率だった。ただ、92年以前では、薬剤耐性検査法が現在と異なっており、97年以降を基礎データとすると、単純平均で0.75%の罹患率になる。
また、複十字病院のデータによると、93003年の11年間でMDR患者は0.63%と、療研とほぼ一致していた。
これらのことから、罹患率を0.75%として推計すると、05年の公式結核サーベイランスでは、菌陽性の初回患者が1万5095人おり、初回MDR患者は113人、人口10万人当たり0.0088人と推計された。
同様に療研と複十字病院のデータから、05年の再発時獲得MDR患者を推計すると132人で、罹患率は人口10万人当たり0.103人。治療失敗時獲得MDR患者は75人で、罹患率は人口10万人当たり0.056人と推計している。