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血漿分画製剤で世界第2位の米CSLベーリングのピーター・ターナー社長は4日、来日に合わせ本紙と都内で会見し、血液製剤の国内自給を目指す日本の血液事業新法下では「横ばいかマイナス成長」にとどまっているものの、「既存製品に加え新製品をできるだけ投入して成長させていきたい」と表明した。一方で、国内自給体制への過度なこだわりは需要・消費を抑制し、結果として患者の治療機会を奪いかねないと指摘。治療機会確保のため、同社としてはシンポジウムを通して、医師などに対する治療法についての情報提供や、患者団体の支援などを強化する姿勢を見せた。
同社は、国内自給率が6割程度のアルブミン製剤では日本のリーダー的存在で、自給率が約9割の免疫グロブリン製剤も販売している。そのほか「タココンブ」など組織接着剤も扱っている。
ターナー社長は、日本の事業環境について「世界的には年8%程度の成長だが、日本は横ばいかマイナス成長。世界的には、国内自給の法律を施行している国は需要が抑えられる方向になってきており、それが顕著なのが血漿分画製剤だ。日本では、免疫グロブリン製剤の消費量が欧米に比べ203割程度と低く、ビジネスとしては悪い」と指摘。
しかし、「それより深刻なのは日本の患者さんだと思う」と述べ、日本の需要・消費が抑えられる結果、適応疾患の診断・治療技術の普及が進まず、患者の治療機会が奪われるおそれがあることに懸念を示した。
そのため同社長は、海外と同様に情報提供活動を強化し、医師らに対するシンポジウムのほか、臨床試験の支援、薬剤の用法に関する情報提供、患者団体の支援などに取り組み、治療機会の確保に努める意向を見せた。
成長が難しい日本市場では、既存製品に加え新製品を投入することで成長を図る方針で、免疫グロブリンでは初の皮下注製剤や「タココンブ」の次世代製剤、遺伝性の血が止まりにくい病気のフォン・ヴィルブランド病治療薬の投入を検討しているという。上市計画や事業目標は明言しなかった。
また、日本の規制環境に合わせ、日本の献血由来原料血漿を元に海外の自社工場で製剤化し、日本に供給する用意があるとした。
日本の規制に対しては、薬価制度に不満を示し、血液製剤は一般の医薬品とは別のルールを定めるべきだと訴えた。血液製剤は一般の医薬品より原価率が高く、薬価の断続的引き下げは採算への影響が大きいことが背景にあるとみられる。
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