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医療法の一部が改正され、「調剤を実施する薬局」が医療提供施設として位置づけられたことを踏まえ、このほど厚生労働省医政局が通知した「医療計画作成指針」においては、「薬局の役割」という独立した項目が設けられた。同時に改正医療法では、医療計画案を作成する際に、「調剤に関する学識経験者の団体」の意見を聞かなければならないと規定された。これを受けて都道府県から薬剤師会に対し、医療計画策定への協力要請があるものと予想される。そのため日本薬剤師会は都道府県薬に対し、薬務主管課などと連携を図り、新たな医療計画に薬局の機能が盛り込まれるように、また昨年9月に示した「新薬剤師行動計画」により、新たな医療計画へ適切に対応するよう通知を出した。
《「医薬品等の供給拠点」と位置づけ”作成には調剤関係者の意見が必要》
【県薬が計画策定へ参画”4疾病5事業で連携体制】
今回の医療計画見直しは、昨年の第5次医療法改正が今年4月から施行されたことに基づくもの。第5次医療法改正の大きな柱の一つに「医療計画制度の拡充・強化等を通じた医療提供体制の確保の推進」が掲げられており、これにより今年度中に新しい医療計画が策定され、来年4月から実施されることになる。
医療法改正で薬局が「医療提供施設」として明記されたことから、医療計画における医療連携体制にも位置づけられることとなり、各薬局には医療計画の達成に協力することが求められる。
改正医療法では「都道府県は、医療に関する専門的科学的知見に基づいて医療計画の案を作成するため、診療または調剤に関する学識経験者の団体の意見を聞かなければならない」と規定されたが、今回の医療計画作成指針では、調剤に関する学識経験者の団体として「都道府県を単位として設立された社団法人である薬剤師会」が明記されている。
これにより都道府県薬には、地域における医療提供体制に、薬局がどのように組み込まれる必要があるのかについて、意見を述べる機会が確保されることになるため、日薬は都道府県薬に対し、新たな医療計画に薬局の機能が盛り込まれるよう、計画の策定へ積極的に参画することを呼びかけている。
新たな医療計画では「疾病または事業ごとの医療連携体制のあり方」を明示することになっており、基本方針および医療計画作成指針では、4疾病(癌、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)および5事業(救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療)が具体的に示されている。
計画作成指針では、疾病または事業ごとの医療連携体制の項で「薬局の役割」として、「4疾病・5事業にかかる医療連携体制の中で、調剤を中心とした医薬品や医療・衛生材料の供給拠点としての役割を担うことが求められる」としていることから、薬局の果たすべき医療機能を医療計画に明記する必要がある。
また「都道府県においては、医療機関と薬局の機能分担および業務の連携によって、時間外においても対応できることなどを計画に記載することにより、患者や住民に対し分かりやすい情報提供の推進を図る」ことも明示された。
【資質向上策も反映可能”他の計画等にも目配りを】
さらに基本方針では薬剤師について、▽より高度な知識と技能を有する薬剤師の養成強化を含め、継続的な資質向上に努めることが求められる▽薬学教育において、医療機関や薬局の協力の下、充実した実務実習を行うこと等を通じて、臨床に係る実践的な能力を培うことが求められる――と記載されており、地域における適正な薬剤師数の確保と共に、資質の向上に関する施策についても、医療計画に盛り込むことが可能と考えられている。
今回の医政局長通知では、都道府県に対し、医療審議会もしくは医療対策協議会の下に、4疾病および5事業ごとに協議する場(作業部会)を設置するよう求めている。さらに必要に応じて、圏域ごとに関係者が具体的な連携について協議する場(圏域連携会議)を設置することも求めている。日薬ではこうした作業部会や圏域連携会議に対しても、県薬および支部薬剤師会が積極的に参画するよう呼びかけた。
疾病または事業ごとの医療体制については、各都道府県が「医療計画作成指針」を参考として、医療計画全体の構成、作成の手順などを検討した上で、具体的な医療体制の構築および計画作成を進めることになる。
指針の中で薬局・薬剤師に関する記載は多くはないが、指針はあくまで最低限のものであることから、日薬は県薬に対し、記載された内容にとどまらず、薬局や薬剤師の役割について、広く関係者の理解を得るよう努力することを求めた。
そのほか新しい医療計画は、「がん対策推進計画」「健康増進計画」「介護保険事業支援計画」「医療費適正化計画」などにも配慮した内容とすることが求められている。県薬は医療計画策定へ参加するに当たって、これら各種計画の作成や実施の動向にも留意することが必要になる。
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