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創薬ベンチャーの米メディシノバは、現在海外でPIIにある多発性硬化症(MS)治療薬「MN‐166」と、喘息急性発作治療薬「MN‐221」の開発を急ぐことなった。PII以降の後期開発品が増加したことから、有効な治療法がない疾患に対して、臨床試験結果が優れていたこの2品目に経営資源を集中させる。両剤とも米国で2010年以降の承認申請を目指す。
同社社長兼CEOの岩城裕一氏が本紙に明かしたもの。両剤のようにアンメッドメディカルニーズを満たし得る「日本発の薬を世界に出していきたい」と意欲を語った。
その候補の一つがMN‐166。MN‐166はホスホジエステラーゼを抑制することによって、ロイコトリエンや一酸化窒素が関与する一連の炎症反応を抑制する経口薬剤として開発されたもので、既に「ケタス」という商品名で、気管支喘息治療薬などとして販売されている。
最近の研究から、MN‐166が自己免疫による神経免疫性疾患であるMSに奏効することが分かってきた。その機序としては、抗炎症作用を発揮するだけでなく、MSでみられる神経細胞を取り巻く髄鞘(ミエリン鞘)の障害や、神経突起の軸索(アクソン)が壊れるのを抑える作用を持つされている。インターフェロン‐βなど既存治療薬の生物製剤と比べて、中和抗体が発生しないというメリットもある。
海外での臨床試験結果によると、プラセボ投与群では約8カ月でMSが再発したのに対し、MN‐166投与群では1年以上まで延長させた。さらに、プラセボに比べて脳の萎縮が起こらなかった。
岩城氏は、試験の結果を踏まえ、脳の萎縮を抑える効果があることから、「アルツハイマー型認知症やパーキンソン病にも応用できる」と、両疾患への開発も視野に入れているという。
現在、導出する方針で、欧米の製薬企業と交渉を進めており、11年の承認申請を目指している。
もう一つは、MN”221。キッセイ薬品から導入したβ2受容体刺激薬で、静脈内投与することで気管が狭窄した気管支喘息急性発作時に有効。
前臨床試験でβ1受容体に対する刺激性が低いことが確認されており、臨床試験の結果でも、動悸など心臓への影響による副作用はほとんどみられていない。米国で10年の承認申請を目指しており、自販を検討している。