日本大衆薬工業協会は、「OTC医薬品に関する新医薬品産業ビジョンへの見解」として、要望事項をまとめ公表した。要望事項では、▽新領域・新分野へのOTC医薬品の活用▽スイッチOTC医薬品の市場化促進▽メタボリック症候群が強く疑われる者の健康管理、回復へのOTC医薬品の利用””などの実現を強く訴え、この実現が医療保険制度の健全化にもつながると指摘。以下の4項目の具体策について、新医薬品産業ビジョンに反映することを要望した。
<1>新領域、新分野へのOTC医薬品の活用
[1]軽医療分野での症状軽減のみならず、生活習慣病予備群等に対しOTC医薬品を広く活用することにより、医療費の適正化やその膨張抑制に役立てる。
[2]これまでOTC医薬品については、その安全性確保にとかく重点が置かれてきたが、一般用医薬品販売制度の整備を踏まえ、もっと効果に優れたOTC医薬品の承認・許可に向けて、基準等の整備を図る。
[3]生活者へのセルフメディケーション普及や、OTC医薬品の選択し拡大に当たっては、生活者からの支持・応援の下に進めることが肝要である。そのような環境醸成に向け、生活者の自助努力に対する経済的インセンティブの増大(保険料の減免、課税控除など)も考慮する。
<2>スイッチOTC医薬品の市場化促進
[1]欧米に比べかなり遅れている現状を打破するため、スイッチOTCスキームを早急に実施する。なお、欧米企業はジェネリック薬参入に伴う医薬品価格の極端な下落対応策として、OTC医薬品市場で一定期間の「先発権」を得ることが可能なスイッチ化を推進している。
[2]国内的にも国際的に見ても矛盾があり、スイッチ化の障害となっているオリジナルメーカーの同意に基づく個別症例解析等を、承認申請時に求めない。
<3>メタボリック症候群が強く疑われる者(予備群も含む)の健康管理、回復へのOTC医薬品の利用
[1]とりわけ、メタボリック症候群が強く疑われる者に活用するため、海外で見られるように血中脂質、血圧等の低下をもたらす医薬品をセルフメディケーションの場で予防的にも使用できるようにする。
[2]このため、スイッチ化において、メタボリック症候群が強く疑われる者の健康管理、回復に使用できるよう、例えば医療用医薬品としての最小用量をOTC医薬品として用いることを検討すべきである。
[3]OTC医薬品は、生活者が自らの判断により自費で購入するものであり、健康管理、回復に使用を認めた場合でも、乱用されにくいと考えられる。また、それらの医薬品は第一類医薬品として、薬剤師による助言に基づいた適正使用がなされるため、安全性も確保されるものである。
<4>その他の支援措置
[1]OTC医薬品の上市化を促進するよう、審査ルールの明示、標準事務処理期間の遵守等の円滑な事務処理を実現する。そのため、迅速かつ透明性のある審査体制の整備充実を進める。
[2]医師の診査を経て、OTC医薬品が活用される機会の拡大に備えて、医師と薬剤師による新たな連携の仕組みを構築する必要がある。例えば、欧州に見られるように、処方せんを介して医師がOTC医薬品利用を患者に示唆し、薬剤師が相談に応じるといった工夫について検討する。
[3]医薬品提供の現場において、OTC医薬品の適正使用に関する情報活用を進めるため、その環境整備や教育・研修の充実を、産官学の協力により行う。
[4]わが国の優れたOTC医薬品を、近隣諸国を初めとした国々に提供できるよう、官民の協力を進める。例えば、アジア太平洋地域の医薬品関係会議に、官がより積極的な参画を進めると共に、民もこれを支える協力を行う。このような活動により、医薬品その他の国際流通が進展することとなる。