改正「疫学研究に関する倫理指針」が、8月下旬に厚生労働・文部科学大臣の連名で告示され、11月1日から施行される予定だ。改正指針では、効率的に研究を推進するため、倫理審査委員会(IRB)の審査を共同研究機関などの外部に依頼できるようにしたほか、IRBへの付議省略について緩和が図られた。
現行の疫学倫理指針では、疫学研究を行う機関の長は、原則としてIRBを設置しなければならない。しかし、「自施設が小規模である」などの理由から、自施設内にIRBを設置できない場合には、共同研究機関、公益法人、学会等に委ねることができると規定していた。
改正指針では、そうしたIRB設置の原則は残しつつも、疫学研究を効率的・効果的に実施していくため、共同研究の場合は、「必要に応じ」て他の共同研究機関のIRBに審査を依頼することができるようにした。
外部IRB審査ができる条件として、▽共同研究であって、専らデータの集積に従事するなどの従たる研究機関▽依頼することが研究の円滑な推進に特に必要と認められる――の二つを新たに加えたもので、それによって共同研究機関のIRBへの審査委託が、従来より広範囲で認められるようになった。
また現行指針では、研究者が疫学研究を実施しようとする際には、研究計画について機関長の許可を受ける必要があり、機関長はIRBの意見を聴くことが規定されていた。
改正指針では、全ての研究について倫理審査が求められることは、IRBの負担が大きいため、▽既に匿名化されている情報を機関外から収集する場合や、無記名調査など、個人情報を取り扱わないもの▽ヒト由来試料を用いないもの▽観察研究であって、人体への負荷・介入を伴わないもの▽研究対象者の意思に回答が委ねられており、質問内容が研究対象者に心理的苦痛をもたらすと想定されないもの――の5要件を全て満たせば、倫理的な問題は少ないとして、IRBの意見を聴くかどうかの判断を、「IRBがあらかじめ指名する者」ができることにした。
なお、データの統計処理のみを委託等で請け負う機関については、この要件にかかわらず、IRBへの付議は要しない。
一方、研究計画の許可後は、研究計画が遵守されて研究が実施されているかについて、研究機関が確認、点検、評価するシステムが機能していないといった危惧が指摘されている。
現行指針では、研究責任者は研究期間が数年にわたる場合は、3年ごとを目安に、研究実施状況報告を研究機関長を通しIRBに提出することなどが規定されている。改正指針では研究機関の長は、▽必要に応じて、指針の適合性に関して自ら点検・評価を行う▽IRBの意見を尊重し、点検・評価に基づき、必要に応じて、研究計画の変更、中止その他疫学研究に関し必要な事項を決めなければならない――との新たな規定を盛んだ。
また、研究機関の長は、有害事象が生じた場合の対応手順などを、あらかじめ定めておくことも求めている。