厚生労働省は、セルフメディケーションの推進に必要な体制や設備などを整えている薬局を地域住民に公表していく制度の導入に乗り出した。
政府が2013年6月に策定した「日本再興戦略」には、「薬局を地域に密着した健康情報の拠点として、一般用医薬品等の適正な使用に関する助言や健康に関する相談、情報提供を行う等、セルフメディケーションの推進のために薬局・薬剤師の活用を促進する」と明記されている。
これを受け、厚労省は14年度予算で「薬局・薬剤師を活用した健康情報拠点の推進事業」を進めており、薬局の機能公表制度の具体的な基準作りは、健康づくり拠点薬局のモデル事業における優良事例や、厚生労働科学研究班がまとめた「薬局の求められる機能とあるべき姿」などを参考に進められるようだ。
既に公表されている薬局のあるべき姿をみてみると、健康相談窓口の設置をはじめ、第1類を含む一般薬や医療・衛生材料の販売、備蓄のない医薬品に対応するための近隣薬局との連携強化などを求めている。
セルフメディケーションといっても、そのやり方は千差万別だ。一般薬を例にとっても、処方箋を受け付けるついでに一般薬を販売することで、その役目を果たしていると考える薬局もあるだろう。
しかし、地域の健康情報拠点になる薬局が“処方箋のついで”でいいのだろうか。健康に不安を抱えている人やその家族が最初に薬局を訪れるようにならなければ、十分に役割を果たしているとは言えまい。
一般薬を例に挙げれば、地域住民の「まずは医療機関に相談」というこれまでの意識を、「まず薬局に相談」に変えるだけの品目数が必要になると考えるのが妥当だろうと思う。
専門紙の就任会見で、地域医療における薬剤師の活躍に期待感を示した厚労省の唐澤剛保険局長は、関係する職種が緊密に連携して信頼関係を構築していくことの重要性も指摘している。
地域住民が気軽に立ち寄ることができるという薬局の特性を考えれば、衛生材料、介護用品などの健康関連グッズを揃え、医療機関や介護施設につないでいくことも重要な役割になる。
そのためには、医師や看護師だけでなく、ケアマネージャーなど、地域包括ケアに密接に関与する職種との連携も不可欠となろう。
厚労省は、今年度のモデル事業が終わり次第、“セルフメディケーション薬局”の基準作りに着手し、早ければ来年の夏ごろに公表したい意向を示しているが、門前薬局にはない強みを手に入れ、“街の科学者”と呼ばれたかつての姿を取り戻すための好機とするためには、相応の要件が求められると考えておいた方が良さそうだ。
こうした積み重ねが、薬剤師の職能に対する理解につながることを期待したい。