政府の2014年度「年次経済財政報告―よみがえる日本経済、広がる可能性」、いわゆる経済財政白書が発表された。経済成長と財政健全化の両立に向けた論点として、歳出面では「とりわけ増加圧力が強い医療・介護費の効率化が急務」とし、中でも医療費については、調剤医療費、入院医療費の伸びが顕著と指摘している。
「また“調剤”がやり玉」と思いきや、「調剤医療費の増加は、薬剤への需要増加および処方される薬剤の単価上昇によるところが大きい」とし、現状の薬価算定方式を図表入りで詳説しつつ、薬剤料適正化のターゲットを「薬価算定方式の見直し等」と「算定方式」に絞り込んだようだ。
白書の記載にもあるように、薬価の設定や保険収載においては、新薬については一部の効能の評価を行っているものの、既収載医薬品については効能の評価を行っておらず、医薬品の効能や特性等の実績の評価は行われない――と指摘している。
これに対し、例えば英国などでは、QOLを考慮した生存年1単位が改善するのに、いくらの費用が必要かを定量的に求める費用対効果分析を用いて薬価算定と保険適用の要否の判断をしている――と紹介。
また、医薬品の保険適用の評価に際して費用対効果の観点を導入することについては、イノベーションの評価との整合性を踏まえつつ、16年度診療報酬改定における試行的導入も視野に入れながら、引き続き検討していく必要があるとしている。要は“英国方式”の導入を求めている。
さて、白書が発表される前日、7月24日に政府・IT総合戦略本部「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」のパブリックコメントが締め切られた。
大綱では、個人情報保護法の制定から今年で10年余を経過し、情報通信技術の飛躍的進歩が多種多様かつビッグデータの収集・分析を可能にし、このことが新産業・新サービスの創出やわが国を取り巻く諸課題の解決に大きく貢献するなど、これからのわが国発のイノベーション創出に寄与するものと期待される――と制度改正の趣旨を説明している。
とはいえ、事業者による“自由”な利活用が主眼であり、「特に利用価値が高いとされるパーソナルデータ」との記述は、個人の医療情報、そのビッグデータが「特に利用価値が高い」に分類されよう。
先の白書で「費用対効果分析」の導入が求められていたが、まさに医療ビッグデータの活用が導入されるべき領域だ。例えば、薬局においてもインフルエンザの流行情報が、全国からリアルタイムに吸い上げられれば、より早い流行予測、対応も可能だ。最適な薬剤選択にもつながる可能性もある。薬剤師・薬局、大学・研究機関を含め、「薬学」が、わが国を取り巻く諸課題に果たす公益的役割は小さくない。