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神戸薬科大学と神戸大学は17日、教育や臨床、研究に関する連携で協定を結んだ。単科の医科大学と薬科大学が連携する例はみられたが、医学部を持つ国立の総合大学と私立薬系大学との連携は全国初となる。神戸大は11学部をもつ総合大学だが、医学部・大学院医学系研究科および附属病院を中心に、当面は教育の連携を先行して取り組む。
これまで神戸薬大と神戸大は、お互いの大学院教育で教員が出向いたり、招聘して講義を行うケースはあったが、大学間での明確な取り決めに基づくものではなかった。
今回の協定ではまず、教育を中心とした連携に取り組むことにしている。神戸大医学部には医学科のほか、看護、検査、理学療法などの医療従事者を育成する保健学科があり、医学生と保健学科学生は初期臨床体験学習で、チームで医療教育を受ける仕組みができあがっている。
今年度から、その場に神戸薬大の教員が指導に参画したが、来年度からは神戸薬大の1年生が加わり、神戸大学生らとチームで医療教育を受講する。また、医学系研究科バイオメディカルサイエンス専攻の大学院生を対象に、神戸薬大大学院の講義の単位互換制度も導入する。
さらに来年度は、両大学の教員が協力して、大学院バイオメディカルサイエンス専攻に、癌専門薬剤師の資格取得を目指す「専門薬剤師養成コース」を設置する。学生は神戸薬大に限らず全国から広く受け入れる予定だ。
臨床面での連携では、医薬品の安全使用や治験体制の確立、病棟における薬剤業務の強化充実に寄与できると判断。神戸薬大の教員が神戸大病院薬剤部の業務に従事し、教育体制の強化・充実も図る。
研究面では、大学院生などを相互の教員が指導できるようにすることにしており、臨床薬理学、テーラーメイド医療の開発、医薬マーケティング、ナノ医薬品工学などの分野で共同研究を行う。医学分野だけではなく、総合大学の強みを生かした工学、理学、農学などとの連携も今後検討していく方針だ。さらに、両大学の連携による連合大学院の設置も2010年度以降の設立を目指している。
神戸大の野上智行学長は、「神戸大は国際的に卓越した教育研究を実現し、地域や国際社会に貢献できる大学をビジョンとして掲げている」とし、「このビジョンを実現する上で神戸薬大と神戸大との連携は極めて重要。両大学の伝統と特徴を相互に尊重し、生かすことで学生教育、研究、医療の各分野においてもこれまでと異なった新たな地平が生まれ、両大学の発展をさらに確実にする」と期待感を示した。
神戸薬大の棚橋孝雄学長は、「医学部との医薬連携を中心として、他学部とも広範な連携を図ることで理想的な薬学教育、チーム医療教育が達成されるものと確信している。教育・学術研究の進展、高度専門職業人の養成、地域医療貢献にも寄与していく」と語った。