サンスターは昨年5月に、静岡県立静岡がんセンター(以下、静岡がんセンター)、静岡県歯科医師会と、癌治療に伴う口腔合併症の予防・軽減方法を確立することを目的に、包括的な共同研究協定を締結したが、このほど同研究成果の一つとして、患者の口腔状態に合わせた口腔ケアセット用品を考案した。当面は静岡がんセンター内の売店で販売されるが、将来的には静岡県歯科医師会の連携歯科医院(現時点では県東部地区のみ)やドラッグストアなど、県内限定で販売される予定。
今回の三者による共同研究は、静岡県が県東部の富士山麓地域を舞台に、医療・健康関連産業の集積・振興を図るため進めている「ファルマバレー・プロジェクト」の推進に加えて、県内の開業医と連携し、地域ぐるみで癌患者の口腔トラブルをサポートするシステムの構築、在宅診療や介護施設で必要な口腔ケア用品の開発などを目的としたもの。
サンスターでは昨年7月に、静岡がんセンター研究所内に、民間企業では初めて研究所(サンスター静岡研究所)を開設し、三者が蓄積したノウハウ、知識、経験をどのように応用できるかの検証を行ってきた。また静岡がんセンターでも、口腔合併症の軽減のためのケアについて議論してきた。共同研究の結果、口腔内の合併症を和らげるためには、歯科医師や歯科衛生士によるケアだけでなく、癌患者が治療開始前から自ら適切な口腔ケアを行うことが最も重要であること、癌患者の口腔内環境を三つのグループに分類できることが分かったため、患者の症状に応じた既存商品の組み合わせを考案した。
「口腔ケアセット」は、虫歯や歯周病予防を目的とした「健康なお口でいたい!スタンダードセット」(プロクト・サンスターハミガキ、バトラーハブラシ#025M、ガム・デンタルリンスノンアルコールタイプで構成)、知覚過敏や歯周病予防で、入れ歯の人にも適した「健康なお口を取り戻したい!症状対策セット」(ガム・デンタルジェルセンシティブ、バトラーハブラシ#025S、ガム・デンタルリンスノンアルコールタイプ)、口腔手術の後や刺激に敏感な人に適した「敏感なお口に…低刺激セット」(バトラーデンタルリキッドジェル#1270P、バトラーハブラシ#025S、ガム・デンタルリンスノンアルコールタイプ)の3種類。
静岡がんセンター歯科口腔外科では今後、同口腔セットをがん治療開始前の口腔ケア指導時に導入し、口腔合併症の軽減・症状緩和に積極的に取り組んでいく予定。一方、サンスターも「三者連携により、これからも口内環境にリスクを抱えたがん患者のQOL向上のために、口腔ケア商品の開発をより積極的に行っていく」としている。将来的には三者が連携をより強化し、糖尿病患者や要介護高齢者の口腔ケアにも拡大させていく。