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2006年「日本国際賞」に、スタチン系高脂血症治療薬を世界で初めて発見し、開発に成功した遠藤章氏(バイオファーム研究所代表取締役所長)が、「治療技術の開発と展開」という分野から選ばれた。
遠藤氏の授賞業績は、スタチンの発見と開発。血中コレステロール値を効果的に下げる薬剤を発見・開発し、ヒトに極めて有効なことを証明する上で決定的な役割を果たしたとされた。
遠藤氏は1976年、6000種の微生物の産生物質を調べる中で、青カビの一種であるPenicillium citrinumから得られた物質「ML”236B」が、血中コレステロール値を下げることを見出した。さらに作用機序として、コレステロール合成の律速酵素であるHMG”CoA還元酵素に強い親和性を持ち、拮抗的に強く阻害していることも明らかにした。
この物質は同じ頃に英国のビーチャム研究所でも見つけられ、コンパクチンと命名されていたが、ラットの血中コレステロール値を低下させないため、研究が中止されていた。しかし遠藤氏は、血中コレステロールの組成がラットよりヒトに近いイヌでは、コレステロール値が下がることを証明し、これがヒトでの有効性を確立する突破口となった。
日本国際賞は、科学技術分野において独創的・飛躍的な成果を挙げ、科学技術の進歩に大きく寄与し、人類の平和と繁栄に著しく貢献したと認められた人に贈られる。毎年、2つの分野を授賞対象として指定し、原則として各分野1件1人に授与される。受賞者には賞状等と副賞として賞金5000万円が贈られる。
今回は遠藤氏のほか、地球環境変動の分野から、サー・ジョン・ホントン氏(英国:ハドレー気候研究センター名誉科学者)も選ばれている。今回の2人を加え、これまでの受賞者は13カ国、60人に上る。