難病などに苦しむ患者が支え合い、連携したり、それを支援しようという動きが出てきた。東京大学医療政策人材養成講座の1期生らが提唱し、各患者会が中心となり、共通課題の解決を目指す「日本患者学会」が設立される方向となった。早ければ年内にもNPO法人として発足する。また、日本製薬工業協会は、PhRMA(米国研究製薬工業協会)やEFPIA(欧州製薬団体連合会)と共同で、患者会の連携を支援する国際シンポジウムの開催を計画している。
日本には同一疾患であっても患者会が複数存在し、それぞれが小規模で、各々の会がどのような活動をしているのかさえ、分からないのが実情だ。また、患者の発言権は少しずつ大きくなってきているとはいえ、これまで横のつながりがなく、関係学会や厚生労働省に対して働きかけをしても、大きな声になりづらい面があった。
「日本患者学会」の設立は、患者会の独自の取り組み。1日には都内で学会設立の理解を深めることなどを目的としたシンポジウムが開かれた。
シンポジウムでは、設立発起人の一人で、パニック症候群患者会「パニ友の会京都」代表の深田雄志氏が、「患者学会は(様々な患者会の集合体のため)一枚岩ではなく、様々な意見がある。だからこそ、物事を中立的に(把握し)進められるのではないか」と発言。
同じく発起人で、顔面にアザなどがある患者の集まりである「ユニークフェイス」の代表理事である石井政之氏は、「過去に起こった薬害事件は、裁判によって解決してきたが、その前に患者側から提言があれば、裁判までいかなかったのではないか」と述べ、患者側が団結し、規制当局などに提言できるリーダー的な人材育成の必要性を強調した。
日本患者学会は、患者会間のネットワークの形成、患者の心理や医師と患者のコミュニケーションの仕方といった研究を行う「患者学講座」の構築、規制当局などと対等に交渉できる人材の育成を行う予定という。
一方、連携を支援する動きもある。これまでも患者会の支援をしてきた製薬協は、横のつながりを支援する活動をすることにした。そのため、PhRMAとEFPIAと共同で12月に、国際シンポジウムを開催する計画を立てている。
医療政策人材養成講座の2期生で、患者自身の自己管理を支援する日本慢性疾患セルフマネジメント協会の伊藤雅治理事長らがまとめた論文をもとに、患者会の活動を支援する組織作りなどを提言する方向で検討が進められている。
また、英国で慢性疾患の患者会を傘下に持つ患者会の連合体で、慢性疾患患者がよりよい生活を送ることのできるよう政策提言などを行っている英国患者会連合(LMCA)のデービット・ピンク氏を招き、経験を広く知らせる機会がもてないかと打診している。