日本製薬団体連合会が傘下団体に提出するよう求めていた薬価制度改革に対する意見で、注目されていた日本製薬工業協会と医薬工業協議会の改革案が明らかになった。いずれも中長期的に導入を求める新制度案が盛られている。製薬協は、保険償還価格は一定の範囲で製薬企業が届け出た価格とする上限付き自由薬価制。長期収載品の大幅引き下げなど、後発品に取って代わることを促す方向で厳しい対応を図る反面、特許期間中の新薬は価格を維持できる仕組みを提案した。一方、医薬協は、新制度案として参照価格制度をベースにした「薬剤給付基準額制度」を提案した。
■製薬協案
保険償還価格の決定は、第三者機関によって、まず現行制度で補正加算の対象になるような「新規性・革新性の高い新薬」と、それ以外の「通常の新薬」とに分類する。新規性の高い新薬は、国内類似薬の200%を上限にするなど、各カテゴリーのルール範囲内で、製薬企業が価格を設定し、届け出た価格を保険償還価格とするなど、企業側の価格に対する自由度を高めている。
特許期間中の新薬価格の維持の仕組みは、薬価調査の結果、平均納入価格が償還価格より7%以内の下落に収まっていれば、薬価改定からは除外するというもの。改定から除外する薬剤には希少疾病用医薬品、必須医薬品を含めることを念頭に置いている。
一方、価格の下落が大きくなるなど、薬価改定除外医薬品から外れると年1回の改定を受ける。また、後発品発売後の初回の薬価改定時には、当該先発品の償還価格を最大で5割引き下げる。それによって薬剤費が増えないよう財政バランスに配慮した。
特許期間中と特許切れ後(後発品発売時)に分けたのは、特許をイノベーションを保護する制度として位置づけているため。特許期間中に高騰する研究開発費を回収し、次の新薬開発へ再投資する。それにより継続的に新薬を創出し、国際競争力の強化につなげるというのが狙いだ。一方、後発品発売後は、後発品に市場を譲る姿勢を明確にした。
段階的に導入し、2015年度の完全実施を想定している。
■医薬協案
08年度に予定される制度改革に向けた加算の要件、調整幅など現行制度の見直しと、5年以内の導入を求める新制度案として参照価格制度をベースにした「薬剤給付基準額制度」を提案。
薬剤給付基準額制度は、国と企業が保険で償還される給付基準額を決定し、それを上回る価格を企業が設定した場合は、上回る部分は患者負担になる仕組み。後発品の場合は、先発品の給付基準額の0.7掛けを給付基準額とする。調整幅にも触れており、当面は給付基準額の10%。給付基準額は年1回改定する。
医薬協薬価委員会は、「先発メーカーも乗れる案ではないかと思う」とし、後発品発売後は患者の選択にも資する案だとしている。
しかし同制度は、「検討することが多岐にわたり(08年度の提案は)時間的に難しい」として、08年度については、ジェネリック(GE)薬使用促進を図るため、次の4点について現行制度の見直しを提案した。
[1]GE薬初収載薬価は現行どおり0・7掛けを堅持する[2]有用性加算の要件の「製剤工夫」に患者のコンプライアンスの向上に資するゼリー製剤など付加価値製剤にも補正加算を適用する[3]調整幅を薬剤管理費、または流通経費と捉え、低薬価品目のコストも考慮し、調整幅を3円か2%にいずれか高い方を設定する方式の導入[4]小包装、頻回包装などの安定供給の観点から最低薬価を局方品と同水準の10円に引き上げる
なお、新制度案に向けては、係数の堅持、調整幅の見直し、最低薬価で布石を打っている。
薬価委員会の澤井光郎委員長は、「(08年度に向けた)4項目は現状を維持するくらいのレベル。最低限のもので、支持していただかなければGE市場が成長していかない」と述べ、政府目標のGEシェア30%を達成するには薬剤給付基準額制度の導入が必要だと、案の狙いを説明している。