ジェネリック医薬品で経済的にも高齢者を支援‐少数・多品目を支えるIT
東京下町・葛飾区の京成本線・堀切菖蒲園駅から徒歩15分程度のところに、江戸時代の有様をしのびながら200種6000株の江戸菖蒲を鑑賞できる「堀切菖蒲園」がある。駅から菖蒲園に向かう半ば辺りに「堀切調剤薬局」(管理薬剤師・吉田茂実さん)がある。20年以上、下町のかかりつけ薬局として、多くの高齢者が通う。応需処方箋の多くは隣接する宮澤医院(内科、小児科)ではあるが、全体の25%程度は広域・近隣医療機関と多様で在庫品も多彩。かつジェネリック医薬品(GE薬)の比率が約42%と高いことも特徴的で、いわば高齢者のお財布にも優しい薬局といえよう。
同店舗は吉田さんと奥さんが葛飾区内で運営する3店舗のうちの1軒。吉田さんのほか、常勤薬剤師1人、事務2人の体制だ。3店舗とも薬剤師は固定だが、他店舗(高砂・鎌倉地区)の薬剤師が週に1~2回程度は来ている。3店舗とも薬剤師は皆ベテランだが、「緊急時に対応してもらう必要があり、研修を兼ねて、常に交流しトレーニングしている」という。
同店舗は高齢・慢性疾患主体。“高砂”は慢性疾患中心だが小児科が増加中。“鎌倉”は急性疾患と小児科・循環器系疾患が半数ずつ、かつ季節変動が大きいと、それぞれ特徴的だ。
また、最近は同店舗を訪れる患者が、近隣の整形外科や眼科などの処方箋も持ち込むようになったという。目の前の薬局に行きがちな高齢者も、かかりつけ薬局の意味、意義が少しずつ浸透してきているようだ。
「安全性を最優先」が大前提
同店舗の特徴の一つにGE薬比率が高いことがある。既に40%を超えている。「元々20年ほど前から、隣の宮澤医院ではGE薬を使っていました。この辺りは下町、また高齢者も多いので何とか負担金を減らしてあげたいという思いだったようです」と振り返る。
そのため「患者さんが『GE薬に替えて!』と来ますが、ほとんど替わっています。『何年も前から替わってるので、これ以上は安くならないよ』と説明することが少なくない」という。当然、GE薬の在庫は多く「全ての患者さんのニーズに応えられる」と胸を張る。
診療所の門前だが、在庫品目は狭スペースながら1200品目を超す。他の2店舗も規模的には同様だが、「500~600品目程度で納まっている」という。どうやら同店舗での“研修”には「高齢者・慢性疾患」に加え「GE薬」への慣れという意味もあるようだ。
それぞれの薬局にはメインとなる医師(医院)があるが、それぞれに考え方は違う。「ある程度は提案しますが、先発品、情報を重視する先生には、あえて異は唱えません」とも語る。
GE薬を勧めるも「イエローペーパーが出た薬では、先発品を使います。患者さんが望んでも、『厚労省からリスクファクターがあると言われているので、替えない方がいいと思う』と説明、納得してもらっている」と、安全性を最優先するのが確固たる方針だ。「その上で患者さんの負担を軽減していくことが大事。……これは隣の先生の方針でもあります」と笑う。
分割販売システムを高く評価
さて、高齢者が多い地域のため、「近所の方に薬を届け説明してくることもある」という。ただ、下町ならではというのか、未だ、家族と一緒に暮らす老人が多く、独居老人は少ない。むしろ家族が処方箋を持ち込むというケースがほとんどだという。とはいえ、「訪問は今後の課題」だという。
多様なGE薬を含め、1200品目を超す医薬品在庫を支えているのが、実は東邦薬品のENIFclubの分割販売システムだという。
葛飾区の薬剤師会では会員の備蓄薬リスト(冊子)が作成され、適宜、譲り合いが行われてきた。「たとえ6錠でも譲ってもらえるので、その方が廃棄のリスクがなくていい」と言いつつも現場では早さも求められる。「調剤拒否をしないのがモットー。できる限り受けるので、最近はエニフに載っていれば注文する。10錠単位で購入できるのはありがたい」という。
実際の操作を見せてもらった。
必要な医薬品を探すのも、手元の端末で簡単に検索できる。例えばアダラートなら「アダラ」と入力すれば、該当する医薬品が10錠単位から、一覧で瞬時に表示される。後は選んで、決定を押すだけ。これで発注は完了だ。
午前中(11時半まで)の注文であれば午後には入荷。患者が待てる状況であれば、午後も5時までに発注すれば翌日午前中には入荷する。「これはうちの武器です」と、『分割販売』システムを高く評価する。不動在庫回避、多品目取り揃えに不可欠というわけだ。吉田さんは「以前なら箱買いなので90錠くらい飛んでしまうこともあった」と苦笑する。
さらに、高く評価するのは「棚卸機能」だ。「これが一番いい。集計も全て出るので、うちの薬局の仕事量が20分の1くらいに軽減されました。一番評価している」という。
空き箱などでバーコードスキャンし在庫数を入力するだけで、棚卸業務ができてしまう。「データを送るとすぐに、エクセルデータになってメールで返信されます。改めて入力、帳票作成も不要なんです」という。
以前は“人海戦術”で各店チェック・記録し、最後に吉田さんがエクセルデータにまとめ入力、集計する――という膨大かつ煩雑な作業が強いられた。「3店舗分なので集計時間も入れると、とんでもなく時間がかかっていた」と振り返る。だが、今は600品目程度なら1~2時間程度、同店舗でも3~4時間で全て終わると笑う。
東邦薬品
http://www.tohoyk.co.jp/ja/products/enifclub/index.html