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医薬品卸、成長には確かな企業姿勢を

2007年05月25日 (金)

 主要医薬品卸各社の2007年3月期決算が出揃った。最大手のメディセオ・パルタックホールディングスは、連結売上高2兆円を突破した初めての卸となったほか、アルフレッサホールディングスは1兆6000億円、スズケンは1兆5000億円、東邦薬品は8000億円に達する勢いであり、売上総利益などの利益面を順調に伸長させると同時に、販管費の削減などにも努力している結果が現れている。

 また、4月にスズケン社長に太田裕史氏が就任し、6月にはアルフレッサ社長に石黒傳六氏が就任する予定となっているなど、卸の再編や新体制の整備も活発化している。業績を見る限りでは順風満帆だとも捉えられるが、解決すべき課題が多いことは、卸自らも重々承知していよう。

 ジェネリック医薬品を除けば、医療用、一般用を問わず、市場が大きく伸びる要素は見当たらない。この市場において、再編もほぼ収束した医薬品卸が最後まで生き残り、かつ永続的に成長していくためには、生産性を向上させ、医薬品流通というコア部分で求められる高度なトレーサビリティとローコスト物流の達成が必要になる。

 さらに、差別化という意味からは、各社それぞれの持ち味を最大限に発揮していくことが重要になろう。同業・異業種とのコラボレーション展開、製造部門とのシナジー、顧客支援システムの進化等々、やり方は多種多様だ。

 最近、水面下の動きで注目されるのが中国への進出構想だ。各社、まだ正式には発表していないが、近日中にもいろいろな中国戦略が示されることになろう。

 一方で、医薬品卸を取り巻く環境も決して安寧ではない。まずは、製造、流通など医療用医薬品を取り扱う企業、業界全体の生命線とも言える、薬価制度改革がある。政治側、行政側からの発言が相次いでいるほか、日本薬業政治連盟の熊倉貞武会長は、薬政連代議員会の席上、「卸にとって、待ったなしの年になる」との見解を述べるなど、薬価制度改革はまさに正念場を迎えることになる。参院選で勢力構成が確定した後、本格化する議論の行方には注視していかなければならない。

 また、直近の問題としては、未妥結・仮納入の是正に向けた取り組みがある。例年よりも低迷した妥結状況で推移してきたが、年度末には例年と同様の水準に落ち着いたようだ。薬価調査の信頼性・正確性を確保する観点から厚生労働省も改善指導などの措置を打ち出したほか、関連企業、医療機関、団体からヒアリングを順次実施するなど、積極的に動いている。

 卸自身の問題としては、最近、特に注目されている企業内部統制、CSRなどの課題も抱える。規模が巨大化した故に、社員の質はもとより、企業の姿勢が強く問われる。特に、扱う商品が生命に関連する医薬品であれば、なおさらである。倫理面での問題発生や不誠実な企業姿勢の発覚は、一瞬で信頼を失墜させ、企業存続の問題へと発展する危険性をもはらんでいる。

 アルフレッサとバイタルネットが、次期の中期経営計画を発表した。主要卸の中計では、理念やビジョン、戦略が示されているが、企業価値を最大化して成長していくための核心は、真摯な企業姿勢にあると言っても過言ではなかろう。



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