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抗ヒスタミン薬の副作用‐前頭葉の血流低下が一因に

2007年05月22日 (火)

 抗ヒスタミン薬が脳の前頭葉の血流に強く影響を及ぼすことを、慶應大学大大学院21世紀COEプログラム心の統合的研究センターの渡辺茂教授と辻井岳雄助教らが発見した。抗ヒスタミン薬を投与すると、前頭葉の血流が低下し、眠気やふらつきなどの副作用につながっていることも明らかになった。抗ヒスタミン薬の中枢神経抑制作用を解明する突破口として、国内外の研究者も注目しており、今後の研究が待たれそう。

 ヒスタミンは、アレルギー反応や炎症の発現に介在する化学伝達物質で、抗ヒスタミン薬が汎用されている。ただ、ヒスタミンの生理作用は多彩で、神経組織では神経伝達物質として働いており、音や光などの外部刺激や、情動、空腹、体温上昇といった内部刺激によっても放出が促進され、覚醒状態の維持、食行動の抑制、記憶学習能の修飾といった生理機能を促進する。そのため、抗ヒスタミン薬投与によって、眠気やふらつき、認知機能の低下などの副作用発現がみられる。

 現在、抗ヒスタミン薬としては、旧世代薬(ケトチフェン、クロルフェニラミン)以外に、最近ではアレルギー制御作用が強く、副作用が少ない新世代薬(エピナスチン、フェキソナジン)が実用化されている。

 渡辺氏らは、抗ヒスタミン薬の脳血流に及ぼす影響を調べようと、光トポグラフィーを使って脳血友の変化について検討を行った。実験は12人の患者に、プラセボ、エピナスチン(新世代薬)、ケトチフェン(旧世代薬)の3種類がを投与された。

 その結果、エピナスチン投与では、プラセボと同様に血流低下は見られず、前頭葉も正常に活動していたが、ケトチフェン投与では前頭葉の血流が低下し、前頭葉の活性化も十分でないことが分かった。

 研究では、抗ヒスタミン薬服用後に、記憶や集中力を必要とする課題を課す検討も行っており、その成績からも、前頭葉の活動に抗ヒスタミン薬が強い影響を及ぼし、その影響が新世代薬と旧世代薬で異なることが突き止められている。

 それらの成績から渡辺氏らは、従来行われてきた眠気の質問紙調査や認知課題の成績に加えて、その神経相関を明らかにすることで、抗ヒスタミン薬の鎮静作用の解明が前進することが期待されるとしている。また、脳血流を調べるという客観的な指標が確立されることで、副作用の少ない新薬開発にも寄与しそうだ。



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