薬関連の法改正に向けた具体的な動きが出てきた。
今年になってから、本紙でも1月11日に最高裁が下した判決を受けて設置された「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」が薬事法改正も視野に入れてスタートしたことや、日本医療器材工業会が医療機器の特性を踏まえた早期の薬事法改正を求めたことなどを伝えている。
中でも早期の実効性が期待されるのが、5日に自民党と公明党による与党政策責任者会議で了承された「麻薬及び向精神薬取締法及び薬事法の一部を改正する法律案」だ。
“脱法ドラッグ”や“合法ハーブ”などの名称が使われて、いかにも違法(=罪に問われる)ではないことをうたって市井に出回っているが、使用・服用した後に健康上の問題、異常な行動などがマスコミで報道されている。
日本における薬物生涯経験率(2009年調査)は、米・英・独・仏・伊の数値(05~08年調査)、大麻で23・0~41・0%、覚せい剤1・4~11・9%、錠剤型合成麻薬MDMA(通称:エクスタシー)2・0~7・5%に比べれば、それぞれ1・4%、0・3%、0・2%と桁違いに低い。
薬物押収量は、07年から減少に転じているとはいえ、10年でも乾燥大麻181・7kg、大麻樹脂13・9kg、覚せい剤310・7kg、MDMA1万8246錠で、法令別検挙者数は覚せい剤取締法1万2200人、大麻取締法2367人、麻薬及び向精神薬取締法375人に達している。
取り締まる側は、薬事法における指定薬物の追加指定、最近では1月26日に新しく8物質を指定する改正省令が施行された。さらに、30日には6物質を麻薬に指定(3月1日施行)するなど、矢継ぎ早に対応しているが、取り締まる側の縦割り対応という問題が浮き上がっていた。
そこで、前述した議員立法による法案が与党によって了承された。資料によると改正内容は既報の通り、麻薬取締官、麻薬取締員に司法警察員としての職務遂行権、立ち入り検査等の行政上の取り締まりの職権の職務追加によって、薬物捜査手法を活用した捜査、検挙、送致が行えると共に、違法薬物全般の取り締まりとの連携、都道府県をまたぐ広域事案への対応力向上が期待できる。
また、厚労相と知事は、麻薬取締官、麻薬取締員を含む職員に指定薬物、疑いがある物品を試験のために必要な最少分量に限り、収去させることを可能とすることなど権限の追加も行うことにしている。
薬は健康をもたらすものでなくてはならない。健康を害する薬物は徹底的に取り締まるべきである。長々と続いている薬物乱用にくさびを打てるか、注目したい。