2013年度予算案が閣議決定された。厚生労働省の医薬関係では、薬局を活用した薬物療法提供体制の整備に4000万円が計上された。抗癌剤をはじめ使い方が難しい薬の適切な服薬指導など、薬剤師の在宅医療への取り組みを支援するモデル事業を全国で進めるというものだ。12年度診療報酬改定でも、重点課題に在宅医療の推進が位置づけられ、在宅患者調剤加算の新設など手厚い報酬体系が盛り込まれた。
ただ、肝心の現場における薬剤師の働きぶりはどうかというと、今一つ評判は芳しくない。一部、先駆的な取り組みが見られるものの、まだ他職種からの認知度は低く、厳しい意見も聞かれる。手当は与えられたが、大方は加算すらしていないのが現状だ。他職種から見れば、それだけで恵まれていると写っている。実績が伴わなければ、当然厳しい批判にさらされることは覚悟しなければならないだろう。
今回、予算計上された体制整備も、在宅医療の充実を図るために必要な事業であることは理解できるが、各方面から「薬局を厚遇しすぎではないか」との声があるのも事実で、それは調剤報酬を含めて次期診療報酬改定に直結する話となる。
事実、日本薬剤師会は「医薬分業の意義が国民に理解されていない」と危機感を示し、薬剤師の基本業務を再点検して目に見える実績を出すよう要請している。
1月には、一般薬のインターネット販売をめぐる最高裁判決で国が敗訴し、新たなルール作りが最大の話題になっている。しかし、これが何を意味するのかをもう一度よく考えるべきだ。対面販売が原則と言いつつ、第1類の文書説明を半数の薬局が行っていない調査結果が突きつけられた。そして、未だ医薬分業という薬剤師業務の本質に対する理解不足が横たわる。
一方、高脂血症治療薬「エパデール」のスイッチOTC化をめぐる騒動では、薬剤師から何の反論も聞こえてこなかった。
なぜ、薬剤師職能の根幹に関わる部分について無言なのか。例えば、共同薬物治療管理業務(CDTM)を実践する好機と主張することはできなかったのか。前向きな取り組みを診療報酬につなげる道筋を示し、国民の納得を得ようという意志が見られなかったのは残念だ。
その点、12年度改定で導入された「病棟薬剤業務実施加算」については、7月から薬剤師業務が医師の負担軽減に役立っているか効果を検証する調査が行われる。病院薬剤師にとって病棟業務を自分たちのものにできるかどうか大きな試金石になっていることを考えると、薬局薬剤師は今こそ職能が問われているという事実を重く受け止めるべきではないか。職能を発揮し、その実績に評価が与えられるという当たり前の形にすることで、初めて国民の理解が得られるはずだ。