地震等の大規模災害時における被災企業の事業中断は、企業そのものの存立だけでなく、地域経済にも大きな影響を及ぼすとして、企業のBCP(事業継続計画)の必要性が指摘されている。これは地域の医療機関も同様で、東京都は「薬局のモデルBCP」および「地域連携マニュアル」の作成に着手することを発表した。
都では昨年度、東日本大震災の被災地における医療物資の供給実態調査を行い、同調査に基づいて昨年11月に「東京都地域防災計画」の修正を決めた。今回、新たな防災計画に則り、薬局BCPと地域連携マニュアルを作成することとした。
なお、既にBCPを策定している病院も多いようで、都でも病院版のモデルBCPは昨年7月に作成が終わっているが、薬局版のBCPについては「恐らく全国的に初めてでは」としている。福祉保健局健康安全部薬務課では今年度末までに作成し、4月以降に各薬局に配布・説明会を行い、普及啓発を行っていく予定だ。
東日本大震災の際に薬局、特に院外の薬局の復旧が大きく遅れ、閉鎖している薬局が多かったために、病院が院内処方に切り替えざるを得ず、病院の負担が大きくなった。また、一部の病院内には支援物資の集積所が設置され、それを管理するために病院薬剤師の人手が奪われ、本来業務である患者対応に支障を来したという。
また実態調査では、こうした病院薬剤部と(院外の)薬局との連携のほか、医薬品供給体制の問題点も指摘されている。被災3県だけでなく、全国的に「災害時は支援物資として送られてくる医薬品等を、自治体等の集積所を経て医療現場へ届ける」という供給体制を想定していたが、東日本大震災ではこの体制が効率的に機能しなかったことも分かった。
医薬分業が定着した現在、災害時に薬局が業務を継続することは、災害時の医療機能の確保に不可欠といえる。そのため、災害によって薬局自体が物的・人的被害を受けても、業務を継続・再開し、災害により増加する患者に対応できるようにするため、今回「薬局のモデルBCP」が作成されることとなった。
また、地域内の薬局同士が相互に連携し、あるいは薬局と病院との連携により、早期に地域の医療機能の回復を図ると共に、薬局と病院双方が効率的に医療を行えるようにし、さらに甚大な被害を受けた地域を、他の地域の薬局・薬剤師会など、地域と地域が支援できる体制を整備するため「地域連携マニュアル」も作成される。
今後は都内の薬局、病院薬剤部、薬剤師会などに幅広くヒアリングを行い、課題の検討を行っていくという。近い将来、首都圏直下型地震の到来が指摘されるだけに、ぜひ被災地の経験を生かしたマニュアルとなることを期待したい。