自公連立の安倍政権誕生と共に新年を迎えた。総選挙に続く首班指名、新内閣発足と、ただでさえ慌ただしい年の瀬だが、余計に慌ただしさを感じながらの年越しとなった。
新政権は喫緊の課題としてデフレ克服と景気回復・経済再生を掲げ、大型補正予算を組み、その後、5月の連休前後に2013年度予算編成を目指す。日本経済再生本部を発足させ、さらに休眠していた経済財政諮問会議を再開し、新たな経済成長戦略を展開していく。甘利明経済再生担当相は就任会見で、「成長戦略はたびたび作られてきたが、それらをブラッシュアップし、実行していくことが大切」と、実行することを強調、「そのために国は、実施のロードマップを示し、環境整備を行うなどのコミットをしっかり出し、民間企業の投資を促していくことが重要」と、政府の立ち位置を説明した。
07年に発足した最初の安倍内閣では、経済成長を図るためのイノベーション戦略を打ち出し、中でも医薬品産業を国の成長産業と位置づけ“一丁目一番地”と優先的に取り組む方針を示した。その後の内閣でもそうした考えが受け継がれ、民主政権でもこの流れは変わらなかった。
今回の内閣でもその方針に変わりがないようだ。自民の政権公約にも「世界一の科学技術立国」を目指すとしている。山本一太科学技術政策担当相は「新たな知の創出というイノベーション戦略は大事。司令塔となる再生本部のもと、第4期科学技術基本計画を推進していきたい」としている。また、茂木敏充経済産業相は、「戦略分野にターゲットを絞った予算の集中的投入や税措置を行うなど、オールジャパンで取り組みたい」との方針を示した。
一方、消費税増税が先行した社会保障と税の一体改革の社会保障制度改革に関しては、国民会議での議論が始まったが、8月には結論をまとめなければならない。関係閣僚とも、国民会議の議論や自公民3党協議などを踏まえて対応するとしている。
また、今年は来年4月に控えた診療報酬改定の議論が本格化する。田村憲久厚生労働相は「改定幅は基本的に財政との兼ね合いがあり、また医療の現状を踏まえて決定するもの」とプラス・マイナスには直接触れなかった。
ただ、自民の政権公約の中には、「持続可能な安心できる医療の実現」のために、「診療報酬(調剤報酬・薬価を含む)の大幅な引き上げにより、▽医学部定員の増員▽勤務医の待遇改善▽診療所の役割の強化・充実▽医師の偏在の是正――ほかを実施」と明記している。また、「安全・安心な薬物療法の推進のため、かかりつけ薬局・薬剤師を中心とした医薬分業を進める」などの公約も見られる。
まずは、デフレ脱却・景気回復への施策だが、後には社会保障や診療報酬が待ち受けている。今年は『実行』をキーワードとして各種施策を見ていきたい。