厚生労働省は、薬局薬剤師療養担当規則等の改正を施行し、今月1日から保険調剤で患者が支払う自己負担分に応じてもらえる調剤ポイントを原則禁止とした。
ところが、留意事項通知でクレジットカードや汎用性の高い電子マネーの使用に伴うポイントなどについては当面容認し、今年度内をメドに取り扱いを検討する方針が示されたことにより、業界内で解釈が二分してしまった。
調剤ポイントを展開する企業を抱える日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は、クレジットカードなどとの“運用の平等性”を理由に「調剤ポイント付与継続は来年3月まで可能」とする独自の見解を発表。JACDSの判断を踏まえ、大手チェーンの多くが1日以降もポイントの提供を続けているようだ。
従来から調剤ポイントに反対している日本薬剤師会は、「経過措置を設ける趣旨でない」と反論し、薬担規則の趣旨徹底を図っている。
三井辨雄厚労相は、閣議後の会見で「調剤報酬なので、これがポイント制になること自体が納得いくことではない。クレジットであろうと現金であろうと、全て禁止しなければならないと思っている」と述べ、クレジットも含め禁止すべきとの考えを強調している。
厚労省関係者も、「調剤ポイントという言葉自体がおかしい。保険診療と区別がついていないのではないか」との認識を示している。
店舗専用のポイントは、客からお店へ支払われた分を原資とする直接的な値引きで、クレジットポイントは店からクレジット会社へと支払われた手数料を原資とするもの。調剤ポイントをめぐる解釈の違いは、この二つを同一視することによって生じるもので、問題解決にはこの部分の共通認識が必要だ。
調剤ポイント問題をめぐっては、関係者から「あまり大きくしたくなかった」との声が上がっていた。業界のモラルが問われるだけでなく、調剤報酬の引き下げといった根幹部分にまで影響を与えかねないからだ。
実際、中央社会保険医療協議会の支払側からは「そんな余裕があるなら薬価を下げろと言いたいが、薬局全体ではなくて、一部が客寄せでやっているのが実態というのも承知している。公定価格である以上、値引き行為は認めるわけにはいかない」との意見も出ている。
そもそも中医協では、昨年11月にクレジットカードや電子マネーを除いてポイント付与を原則禁止する方針を合意しており、当初、調剤ポイント原則禁止は、今年4月から実施される予定だった。
薬担規則の改正案に対するパブリックコメント募集で、サービスが一定程度浸透していることが明らかになったことを踏まえ、周知徹底を図るための期間として、6カ月延長の措置を講じた。厚労省は1年近く前から行政指導を明確にしているだけに、ポイント禁止が事実上なし崩し状態になってしまわないよう、関係者で知恵を絞ってもらいたい。