ライオンは、男性ホルモンが脱毛シグナル(NT‐4)の作用を亢進することを初めて解明すると共に、海藻の一種であるオキナワモズクの抽出物を塗布することで、男性ホルモンに起因するNT‐4の生成が抑制され、発毛回復作用があることを見出した。ヒトでの臨床試験はまだ行っていないが、同社では「年内にはオキナワモズク抽出物を用いた育毛剤の製品化を目指し、研究開発を進めていく」としている。
同社生物科学研究所ではこれまで、発毛促進シグナルの研究と共に、男性型脱毛症のもう一つの発症因子として考えられてきた脱毛シグナルにも着目し、研究を進めてきた。特に毛髪の成長阻害が誘導されることが報告されている脱毛シグナル「NT‐4」に対する男性ホルモンの関与や、NT‐4を抑制する成分探索研究に取り組み、新たな知見を得た。
ヒト角化細胞を用い、NT‐4を添加してアポトーシス発現を調べたところ、NT‐4を添加した系は無添加の系に比べて、アポトーシスを起こした細胞が有意に増加した。またヒト毛乳頭細胞に男性ホルモンを添加することで、毛乳頭細胞内のNT‐4遺伝子及び蛋白質の生成量が明らかに増大することが確認された。
これらのことから、男性ホルモンが毛乳頭細胞内に存在する男性ホルモンの受容体と結合すると、NT‐4生成のスイッチが作動して、脱毛シグナルとなるタンパク質NT‐4が生成されることでアポトーシスが誘導され、男性型脱毛症が引き起こされると推定した。
次に、脱毛シグナルNT‐4の働きを弱める物質を探索するため、漢方などの植物や海藻類など257種の天然物、45種の化学物質について、男性ホルモン存在下で毛乳頭細胞を用いてNT‐4遺伝子の生成抑制効果を調べたところ、特に海藻類でNT‐4抑制効果の高いものが多いことが分かった。評価を行った天然物(257種)で、NT‐4生成シグナルを50%以上抑制した割合は生薬が21・9%、南米植物が28・9%、海藻が62・5%となっている。
さらに男性ホルモンを投与することで発毛開始を遅らせたマウスを用いて検討した結果、オキナワモズク抽出物を塗布するとNT‐4の生成が阻害され、男性ホルモンによって発毛の遅れた毛周期を正常な状態に回復させる効果が高いことが確認されたという。