夏本番を迎えていることもあるせいか「違法ドラッグ」「脱法ハーブ」に関する話題が紙面等を賑わせている。この夏、厚生労働省では新たに9物質を指定薬物に指定すると共に、パンフレット「危険!違法ドラッグ使用厳禁!!」を作成。また東京都では「都道府県違法ドラッグ対策連絡会」を開催し、全国の県薬務課担当者らと情報交換をするなど、行政サイドとしての対策は進められつつある。
また、民主党では厚生労働部門会議「違法ドラッグワーキングチーム(WT)」を設置、積極的に会合を重ねている。第3回WTにおいては、日本薬剤師会がヒアリングに呼ばれ意見陳述。「違法ハーブ、違法ドラッグ規制に対する意見」として、[1]指定薬物の指定の円滑化および指定のあり方の見直し[2]「無承認無許可医薬品」としての薬事法の厳格な適用[3]インターネットの違法ドラッグの報告、販売規制の徹底――の三つを提案、要望した。
いずれも行政側に対する取り締まり強化やきめ細かい法的対応を求めたもの。いわゆる“脱法ハーブ”の摂取者による交通事故が発生するなど、問題が深刻化している現状を考えれば、規制強化は当然のことであろう。
意見陳述では、全国の薬剤師会による薬物乱用防止活動・啓発事業を紹介すると共に、学校薬剤師活動をはじめとする「薬剤師の役割」を大いにアピールした。
薬剤師会幹部によれば、低学年から指導教育できるカリキュラム作り、薬剤師等の人材が教育現場で直接指導できる予算措置などの提案が、概ね理解を得たという。
7月末に開かれた文部科学省による「2012年度学校環境衛生・薬事衛生研究協議会」でも急きょ、「危険!違法ドラッグ使用厳禁?」パンフレットが、学校薬剤師や養護教諭らに配布され、その徹底が求められた。日薬によれば、このパンフレットは全国5万薬局に掲示され、啓発活動を展開するという。
薬剤師法第1条を見るまでもなく、薬剤師は薬の専門家として、国民の“薬の正しい使い方・つきあい方”を支援する観点から、改めて「違法ドラッグ」「脱法ハーブ」がはびこらない社会に貢献することが求められている。
全国の薬局等が一斉にポスターを貼り、薬剤師が街頭で訴えるなど、ある意味では薬剤師の存在アピール、違法ドラッグへの関心を引くという意味では、派手なパフォーマンスを展開することが必要かもしれない。
ただ、一番大事なことは、長年の学薬活動で培った、無垢な子どもたちへの薬教育や薬物乱用教育の支援という、地道な活動の徹底であろう。
日本では第3次乱用期に当たるが、乱用の状況は欧米ほどではないという。その鍵の一つには「正しい知識の普及・浸透」もあるのだろう。今後も薬剤師らしい戦いを介し、子どもたちが自ら身を守る術を、授けてもらいたい。