厚生労働科学研究班が「薬剤師需給動向の予測に関する研究」報告書をまとめた。今後の需要拡大には在宅医療への取り組み、かかりつけ薬局機能の進展が鍵になると分析している。また、病院については、「病棟薬剤業務実施加算」の新設などを受け、薬剤師の採用割合が多少増えると見込んでいる。
人口が減少している中で、他の医療職を含め、大幅に薬剤師需要が増加するとは考えにくいが、高齢化の進展や在宅医療の推進が、薬剤師にとっても、守備範囲拡大のチャンスだ。
報告では薬局、ドラッグストアでは、1店舗当たりの薬剤師数はそれほど大きく増えるとは考えられないが、ドラッグストア、チェーン薬局業界とも、店舗数を増加する戦略を立てているため、都市部を中心に今後も薬剤師需要は堅調に推移すると予測。
さらに、今後の需要に影響を与える要因は、かかりつけ薬局機能の拡大、在宅ケアへの関与に加え、スイッチOTC薬の拡大も挙げている。
困窮した国の財政状況を見れば、入院医療から在宅医療へのシフトは、待ったなしの状況。その意味では地域薬局・薬剤師の対応への期待は大きくなっている。
今春、8182人の6年制薬剤師が誕生した。新設校が増え続けた時期、本紙は「国試合格1万人時代」と伝えた。新設ラッシュにより4000人以上も定員が増加し、当時、薬剤師の就職難を心配したことが嘘のようだ。
今後も就職難は心配せずに済むかもしれないが、「報告」が需要に与える要因として挙げた、かかりつけ薬局機能の拡大、在宅ケアへの関与、スイッチOTC薬の拡大は、今まさに地域薬局・薬剤師の重要課題ともなっている。
ある在宅医療に詳しい薬剤師は「在宅は今、採算が合わないといわれるが、1件に1時間もかかれば当然のこと」と言う。「現場は慢性疾患で動けなくなった患者が多く、特別な知識・スキルが必要なわけではない。“窓口”よりも患者のことがよく分かる。皆で関われば負担・持ち出しも減る」と、多くの薬局が取り組むことが大事だと指摘する。
これまで地域で知られなかった薬局だが、「在宅訪問可能な薬局リスト」の作成と関係者への配布が全国的に進みつつある。ようやく、薬剤師会としてのPRツールが整ってきている。あとは各薬局がどうPRするかだが、「肝心なのは患者に理解がされること」とも指摘。
今日窓口に来た“元気”おばあさんが、明日には入院しているかもしれない。未だ薬局が退院時カンファレンスに呼ばれないとも聞くが、在宅療養での薬局の役割が患者に認識されていない面もある。リスト作りなど組織的取り組みと共に、日頃から個々に「在宅が薬局業務の一環」との意識づけが重要だ。需要増加と薬学生確保、いずれも先輩の責任は大きい。