急性骨髄性白血病(AML)の新たな治療に向け、受容体型チロシンキナーゼFLT3が有望な分子標的であることが、23日に札幌市で始まった第5回日本臨床腫瘍学会で清井仁氏(名古屋大学病院難治感染症部)から報告された。既に白血病細胞のFLT3に特異的に作用し、骨髄抑制も少ない化合物KW2449が開発され、米国で臨床試験が進行中で、日本発の分子標的薬剤の発表は大きな関心を呼んだ。
これまで慢性骨髄性白血病(CML)に対しては、イマチニブの高い効果が多くの臨床試験で証明されているが、AMLの治療成績は満足のいくものではなく、過去20年来課題が残されてきた部分でもある。FLT3は、ほとんどのAMLに発現し、3割以上に変異が見られる受容体型チロシンキナーゼ。しかもFLT3に変異があると予後不良であることから、清井氏らは有望な分子標的として注目した。既に欧米では、MLN518、SU11248、PKC412等のFLT3阻害剤開発が進められていたが、思うような効果は得られず、強い副作用の発現もあって単剤での限界が指摘されていた。
そこで清井氏らは、それらの問題点を克服する特異的なFLT3阻害剤の開発を目指し、実際の臨床検体において、治療上の妥当性(POC)を得た化合物のスクリーニングを開始した。その結果見出したFI”700は、マウスで腫瘍縮小効果を確認すると共に、血液毒性も少なく、白血病細胞だけに作用する理想的な薬剤であると考えられた。現在、米国で特異的FLT3阻害剤の臨床試験が始まっており、AMLの分子標的薬剤開発に向けて注目される報告となった。