|
エーザイは22日、同社の米州統括会社が、米国のバイオベンチャー「モルフォテック」(ペンシルバニア州、社長:ニコラス・ニコライデス氏)を3億2500万ドルで買収する契約を締結したと発表した。買収完了は2007年度第1四半期の見通し。モルフォテックは独自の抗体産生技術を持ち、抗癌剤開発などを手がけてきた。現在、2品目の抗体医薬が臨床試験段階にある。エーザイでは癌を中期計画の重点領域に掲げており、癌領域でも抗体医薬へ本格参入を果たすことになる。
モルフォテックの設立は2000年で、癌のほか、リウマチなど炎症性疾患、感染症分野の抗体医薬研究開発に取り組んでいる。ハイスループット・ロボットを用いて抗体を産生する細胞株の速やかな選択、完全ヒトモノクローナル抗体の産生、最適化などの独自の技術を持つ。
エーザイは、抗体の標的探索で日本のベンチャーとも提携しており、それらの研究から発見された標的に対して、モルフォテックの技術を応用することで、抗体の創出とその最適化などをスピードアップできると判断した。また、両社ともに早い製品化を望んでいることから、今回の契約締結となった。
モルフォテックでは現在、二つの抗体医薬候補を臨床開発中だ。一つは、フォレイト受容体を標的としたヒト化IgG1抗体「MORAb”003」で、プラチナ系抗癌剤耐性の卵巣癌の適応に向けてPI/IIが進行している。もう一つは、メソセリンを標的とするIgG1抗体「MORAb”009」で、膵臓、肺癌の適応を狙いPIが行われている。申請は2011年度以降とみられるが、エーザイでは世界同時申請を目指し、取り組むとしている。
エーザイは06年10月に米「ライガンド」から抗癌剤4製品を買収している。今回の買収で、癌領域の本格展開に向け事業体制が強化されることになる。
都内で記者会見したエーザイの内藤晴夫社長は、「モルフォテック社の充実したパイプライン、抗体創出基盤、優秀な人材は、当社のバイオロジクスの研究開発活動において中核的存在となる」と述べ、モルフォテック社の研究開発の自律性を尊重し、抗体開発プロジェクトのリーダーや開発プロジェクトの全社的な意思決定にも参画させる姿勢を示した。
中継で会見に参加したモルフォテックのニコラス・ニコライデス社長は「世界の大手製薬企業から(アライアンスなどの)話をいただいていたが、私どもの技術基盤とパイプラインを最大活用するには、エーザイがベストフィットだった」と話した。