今春の第1期生卒業を目前に、6年制教育課程を経た薬剤師の国家公務員の初任給が決まった。昨年12月に人事院規則の一部改正が行われ、その初任給は医療職俸給表(二)の2級15号俸、20万0800円になった。規則は2月1日から施行される。
この俸給表は、主に病院薬剤師に影響を及ぼすものだ。独立行政法人化の進展によって国家公務員の薬剤師は百数十人にまで減少しているものの、国立系の病院や大学病院のほか公立病院、さらには民間病院まで、この給与体系をそのまま導入したり、参考にしている施設は多い。
病院薬剤師の給与改善は関係者にとって長年の課題だった。今回の改正でそれが完全に解決されたとは言い難いが、良くも悪くも一つの決着がついたことは感慨深い。
従来の4年卒薬剤師の初任給は医療職俸給表(二)の2級1号俸、17万8200円だった。それに比べ2万円強が上積みされ、4年卒薬剤師が3年半働いた時点と同等の給与に設定された。3級への早期昇格も可能になった。
よく比較される看護師の国家公務員の初任給は短大3年卒で18万8900円、大学卒で19万8300円。1970年代に薬剤師の初任給が看護師を下回ってから30年以上を経て、再び抜き返した。
薬学教育を6年制に移行させる法改正が国会で成立した04年からこれまでの間ずっと、6年卒にふさわしい給与体系をどう求めていくのか、日本病院薬剤師会を中心に議論が進められてきた。
医師は医療職俸給表(一)、看護師は医療職俸給表(三)で評価される。医療職俸給表(二)は、以前は薬剤師の俸給表との意味合いが強かったが、次第に臨床検査技師、診療放射線技師らも同じ俸給表で評価されるようになった。
そこで6年制への移行を機に、医師に準ずる給与体系の実現に向けて、▽医療職俸給表(一)での評価を求める▽俸給表(一)と(二)の中間に位置する新たな俸給表を策定してもらう――などのプランが考案された。
しかし、これらは法改正が必要で実現のハードルは高かった。それならばと、医療職俸給表(二)3等級1号俸を目指したが、最終的には2級15号俸で決着した。
当初の目標には届かなかったが、周囲の病院薬剤師に聞くと、前向きな感想が多い。国家財政の逼迫など厳しい環境下で「満足できる結果ではないが、状況を考えると合格点」「看護師を上回った。及第点といえる」との声が聞かれた。
中央レベルでの交渉事は終わり、一つの基準が決まった。今後、さらなる上積みを求めるなら、各病院ごとに交渉を行うべきだろう。病院によって薬剤師の給与体系にはバラツキがある。病院経営や医療の質、安全性の向上に薬剤師が貢献し、目に見える形で実績を示すことが必要だ。それは各病院の薬剤部長の手腕にかかっている。