日本製薬工業協会会長 手代木 功
現在の世界情勢は、欧州債務危機、米国経済の低迷といった先進国経済の不調、中国、インドをはじめとした新興国の台頭、北アフリカ・中東の民主化運動の活発化など、大きな変革の渦中にあります。
一方、日本においては、東日本大震災の復興財源の問題はもとより、放射能汚染や電力供給不足などの問題に加え、極端な円高やタイの大洪水等が、経済に大きな打撃となりました。また、国債と借入金を合わせた、いわゆる「日本の借金」が初めて1000兆円を超え、社会保障費も過去最高を更新しているといった社会経済情勢にあります。
医療制度関連においては、4月に薬価改定、診療報酬と介護報酬の一体改革という大きな変化を控えており、さらには、税と社会保障の一体改革も議論の最中にあり、製薬産業の今後にとりましても非常に厳しく重要な時期を迎えております。
製薬協は、このような環境の中、本年の課題として、▽業界一体となったコンプライアンスの徹底▽研究開発型製薬産業振興策の一層の充実▽安全対策の強化▽国際連携・国際協力のさらなる推進▽国民・患者貢献、経済成長への寄与等製薬産業に対する理解の促進――の5点を挙げ、中でもコンプライアンスの徹底を最重要課題としております。
現在、世界的に利益相反に関連した情報公開法規範を整備する流れとなっており、製薬協においても「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」を策定いたしました。
これは、会員企業各社が「透明性に関する指針」を2012年度より新たに施行し、医療機関・医療担当者との金銭授受の詳細を各社ホームページで開示するというものです。同時に施行される医療用医薬品製造販売業公正競争規約の改正と相まって、製薬企業と医療機関・医療担当者との関係が今まで以上に透明化され、国民および世界の人々から、生命関連産業としての信頼をさらに得られるものだと確信しております。
われわれ製薬協会員企業の使命は、「革新的で有用性の高い新薬を創出し、一日でも早く、わが国のみならず、世界の人々の健康と福祉の向上に貢献する」ことにより、「日本の経済成長に寄与すること」であり、その実現に向けて、五つの課題に積極的に取り組んでまいる所存です。