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幹細胞から角膜上皮シートの作製に成功‐難治性角膜上皮障害の再生医療が進展

2007年03月14日 (水)

 東京大学医学部附属病院は13日、同院の山上聡助教授ら研究グループが、成人から採取した1個の幹細胞から角膜上皮や結膜シートを作製することに成功したと発表した。無血清培地で細胞培養ができることから、動物由来感染症などのリスクは非常に低く、安全・容易に難治性角膜上皮障害に用いる角膜上皮シートなどを得ることが可能になった。山上氏らは、「即座に臨床応用に用いることができるため、今後、安全性などの検討した上、既存の培養法から早期に切り替えて、より安全で効果の高い再生医療を実現し実施していく」としている。

 成果は、再生医療のベンチャー企業であるアルブラスト(神戸市・社長北川全氏)の寄付講座である東大病院ティッシュ・エンジニアリング部「角膜組織再生医療寄付講座」の山上助教授らの研究で得られたもの。13日に、神奈川県横浜市で開催されている日本再生医療学会で発表された。

 難治性角膜上皮障害の治療では、患者から採取して作製された再生角膜上皮シートや口腔粘膜上皮シートが用いられているが、細胞・組織の元となる幹細胞は未発見だった。

 研究では、細胞を採取する際に用いる遠心管に細胞が接着していたことに気づき、接着のための特別な工夫をしていない培養容器を用いて、角膜輪部の幹細胞を含むと考えられる上皮細胞の培養を試みた。その結果、1万個に12013個の割合で接着する細胞があることが分かった。

 通常、上皮細胞などの付着系細胞を培養する場合では、培養容器に接着させるための工夫をしないと育たない。特別な工夫をしなくても接着する細胞の特性を調べたところでは、培養に必須と考えられていた動物血清や異種動物の細胞との共培養がなくても、単独で生育できることが判明した。

 単離した1個の細胞を培養した結果では、1週間ほどでコロニーが形成され、3週間後には直径2cmほどの角膜上皮組織ができたという。得られた細胞シートは、ヒトの角膜上皮組織と形態的に大きな変化はなく、ほぼ完全な角膜上皮組織が形成されたことから、この細胞が角膜上皮幹細胞だと確認された。

 今回の成果について山上氏らは、「一個の細胞から組織構築が行えたということは、再生医療に用いる上皮シートが非常に容易に作製できるということを示している」としている。

 難治性角膜上皮障害は、医薬品の非常に重篤な副作用である「スティーブンス・ジョンソン症候群」でもみられる。



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