注射用カリウム製剤の投与目的について、多くの医療関係者が「ビタミン補給」「滋養強壮」と誤った理解をしていることが、古川裕之氏(金沢大学病院臨床試験管理センター)の調査で明らかになった。特にアスパラギン酸カリウム注、アスパラカリウム注については、一般にアスパラドリンク剤が流通していることもあって、正しく理解されていなかった。調査を行った古川氏は「名称表示方法の変更など、早急な改善策が求められる」と指摘している。
注射用カリウム製剤は、誤投与による致命的な事例が繰り返し報道されており、患者安全管理の上で危険性が高い薬剤。そこで、古川氏は医療提供者(医師、看護師、薬剤師)を対象に、医療現場で使用されている注射用カリウム製剤のうち、▽アスパラギン酸カリウム注▽アスパラカリウム注▽KCL注””の3製剤の投与目的について調査を行った。
調査は、2007年103月の期間に無記名の質問用紙を用いて行い、医師25人、看護師297人、薬剤師271人から回答が得られた。
その結果、「アスパラギン酸カリウム注」については、医師の32%、看護師の19%、薬剤師の17%が「ビタミン補給」と回答。また、医師の12%、看護師の17%、薬剤師の12%が「滋養強壮」と誤った回答をしており、本来の投与目的である「電解質補給」と回答したのは、医師と看護師の44%、薬剤師の59%にとどまった。
また、「アスパラカリウム注」については、医師の4%、看護師の9%、薬剤師の6%が「ビタミン補給」と回答し、「電解質補給」と正しい回答をしたのは医師84%、看護師が81%、薬剤師の89%であった。
一方、「KCL注」では、「電解質補給」との回答は医師が100%、看護師が91%、薬剤師が89%で、ほとんどが正しい投与目的を理解していたが、看護師の3%が「ビタミン補給」、薬剤師の1%が「滋養強壮」と回答していた。
これらの調査結果から、「アスパラギン酸カリウム注」において、正しく投与目的が理解されていないことが明らかになった。また、「アスパラカリウム注」においても、看護師の11%が「ビタミン補給」「滋養強壮」と回答していることから、市販ドリンク剤の名称「アスパラ」シリーズの影響が少なくないことを示唆する結果でもあった。また、均一な薬剤混合が確認できるように添加されているビタミンB2による製剤の黄着色も、ドリンク剤を連想させている可能性がある。
古川氏は「これらのエラーを防止するためには、新人を迎える4月を前に、アスパラギン酸(あるいはアスパラ)部分とカリウム部分のフォントサイズを変え、カリウム部分を大きく表示すると同時に、カリウム部分を赤字で表示するなど、エラー防止に向けた緊急の改善が必要である」と注意を喚起している。