国境なき医師団(MSF)は7日、日本政府が協議への参加を進めている環太平洋経済連携協定(TPP)について、「TPPに盛り込まれた知的財産権の保護に関する条項によって、途上国向けの安価なジェネリック医薬品(GE薬)の供給が脅かされる」と考慮を求める声明を発表した。
米国は、TPPによって知的財産権の保護強化を進めているとされるが、MSFは「日本でのTPPをめぐる議論で、途上国での医薬品供給が脅かされる懸念が除外されている」と憂慮を表明。「日本政府がTPP交渉で、知的財産権を厳格に保護する条項が途上国の患者におよぼす影響を適切に考慮しなければ、これまでのエイズ治療などの進歩が台無しになる」と強い懸念を示している。
また、米国が進める知的財産権の保護強化は、TPP参加国におけるGE薬の供給遅れ、GE薬メーカー間の価格競争が後退する恐れを指摘。さらに、日本が「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」の主要な資金提供者であることを挙げ、「基金の支援を受けたプログラムの多くがGE薬に頼っており、日本は自国の対外援助政策にも影響を与えることになる」として、日本政府に考慮を要請した。