厚生労働省の研究班が、モキシフロキサシン、シンバスタチン、メロキシカムを対象に、日本人・中国人・韓国人・北米在住白人の健常成人男性における単回投与後の薬物血中濃度を同一プロトコールで調べたところ、いずれも民族間に大きな差が認められなかったことが分かった。APEC多地域共同臨床試験東京ワークショップで、頭金正博名古屋市立大学教授が発表した。
3剤は、いずれも過去の報告で薬物動態の民族差が示唆されていたが、条件を揃えて臨床試験を実施すると、モキシフロキサシンで白人にグルクロン酸抱合体の血中濃度が高い傾向が見られたものの、UGT1A1遺伝子多型の発現頻度で説明がつき、他の2剤に薬物動態の民族差は見られなかった。
頭金氏は、第I相の試験デザインに関する考察として、[1]薬物動態の民族間比較は同一プロトコールに基づいて評価する[2]関連する遺伝子多型を明確にして評価する――の2点を指摘した。
日中韓薬事規制当局は、2007年の3カ国保健大臣共同声明に基づいて、臨床試験データの相互利用を目指した検討を進めている。
今回の成果は、東アジア地域における医薬品の応答性に関する民族的要因を明らかにするために実施した国際共同研究の中間報告的な位置づけ。今後、被験者を増やした母集団薬物動態試験や薬力学試験が行われる見通し。