マイコプラズマ肺炎が流行しているが、治療に用いる抗菌薬であるマクロライド(ML)の耐性菌が小児に多く見られる。国立感染症研究所や北里大学北里生命科学研究所、慶應義塾大学感染制御センターなどのグループの調査で分かった。現在、MLを処方したが、臨床症状が改善せず入院加療となった患児には、多くの場合、ミノサイクリン(MINO)が投与されている。
同グループの調べでは、15歳以下の入院肺炎患者の2割が近くマイコプラズマ肺炎だという。今年は、第22週(5月30~6月5日)辺りから増え出し、学童の夏休み期間中はやや減少したが、2学期以降再び増加し、この10年間を見ても、最大の流行となっている。
ML耐性マイコプラズマが分離されたのは2000年からで、同グループでは02年に小児肺炎例から分離し、その後、経年的に耐性率が高くなってきている。03年には5・0%と低かったが、06年の流行期には30・6%、今年は89・5%に達している。この耐性化は全国規模で見られ、一度クラスで発症者が出ると、潜伏期間や咳嗽の強さもあって、瞬く間に周囲に拡散していくことが、広がりの原因として考えられている。
同グループは、「ML耐性マイコプラズマはエリスロマイシン(EM)、クラリスロマイシン(CAM)、アジスロマイシン(AZM)などに明らかに高度耐性化している。以前は優れた臨床効果が見られたML投与にもかかわらず、その効果が見られない遷延化例や重症化例が増えたのはこのため」と分析している。
現在、マイコプラズマ感染症と診断され、MLを処方したにもかかわらず、臨床症状が改善せず、入院加療となった患児には、多くの場合、MINOを使用せざるを得ない状況にある。
MINOには耐性菌は認められていないが、抗菌力に非常に優れているわけではないという。実際、入院加療患児にMINOを使用すると、70%の例で24時間以内に解熱と症状が改善するが、15%の例にはステロイドが使用されいてる。同グループでは、「1週間以上の遷延化例では、各種炎症マーカーの値が亢進している例が多く、ステロイドの併用はLDHやフェリチンなどの検査値を見て、慎重に判断する必要がある」としている。