厚生労働省は9日、医療事故の死因究明のあり方についての試案「診療行為に関連した死亡の死因究明等のあり方に関する課題と検討の方向性」を公表した。死因究明を行う組織や診療関連死の届出制度、調査などのあり方を論点として掲げている。4月20日までパブリックコメントを募集し、2007年度早々にも有識者による検討会を設置。試案をたたき台にパブリックコメントの結果なども踏まえて検討を進める予定だ。
試案では、診療関連死などについての死因調査や、臨床経過の評価・分析等に関して、これまで、制度の構築など行政の対応が必ずしも十分でなく、結果として民事手続や刑事手続に期待されるようになっている現状を指摘。このような状況に陥った要因の一つとして、「死因調査や臨床経過の評価・分析、再発防止策の検討等を行う専門的な機関がなかったこと」などを挙げた。これらを踏まえ、試案では課題と検討の方向性を提示した。
具体的に論点として掲げたのは、[1]死因究明を行う組織[2]届出制度のあり方[3]調査組織における調査のあり方[4]再発防止のための取り組み[5]行政処分、民事紛争及び刑事手続きとの関係””など。
組織のあり方については、中立性・公正性や臨床・解剖などに関する高度な専門性に加え、事故調査に関する調査権限、秘密の保持などが求められるとし、こうした特性を配慮すると、行政機関または行政機関内に置かれる委員会を中心に検討するとの考えを示した。また、監察医制度など、現在ある死因究明のための機構や、制度との関係を整理する必要性も指摘している。
届出制度に関しては今後、届出先や届出対象となる診療関連死の範囲、医師法第21条の異常死の届出との関係などを具体化する必要があるとしている。届出先の例としては、[1]国(厚労省)または都道府県が届出を受け付け調査組織に調査させる[2]調査組織が自ら届出を受け付け調査を行う””といった仕組みを挙げている。対象となる範囲は、現在、医療事故情報収集等事業で特定機能病院などに対して、一定の範囲で医療事故等の発生報告を求めており、この実績等を踏まえて検討する。
調査手順の具体例として、[1]死因調査のため必要に応じて解剖、CT等画像検査、尿・血液検査等を実施[2]診療録の調査、関係者への聞き取り調査を行い、臨床経過・死因等を調査[3]解剖報告書、臨床経過等の調査結果等を調査・評価委員会で評価・検討[4]評価・検討結果を踏まえた調査報告書の作成[5]調査報告書の当事者への交付及び個人情報を削除した形での公表等””を挙げた。