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米国のバイオ産業の市場規模は全世界の7割強を占め、企業数も他の地域を圧倒している――。日本貿易振興機構(ジェトロ)ニューヨークセンターの上田洋二氏は7日、ジェトロ大阪本部で開かれた「米国バイオ最新動向セミナー」で講演し、米国のバイオベンチャーの現状を解説した。2000年のバブル時に株価は急落したが、ここ数年は新規上場が増えて上場企業数も回復。パイプラインを拡充したい大手製薬会社が、買収などによってバイオベンチャーの技術や人材を取り込む動きが活発化しているほか、米国政府も年間3兆円を越える研究開発費を大学などに分配し、バイオベンチャーの育成を支援していると説明した。
05年の日本のバイオベンチャー企業数は531社、上場企業数は13社にとどまっているのに対し、米国はそれぞれ1500社、363社に達しており、大きな開きがある。米国では創薬を手がけるバイオベンチャーが多く、世界のバイオ産業の市場のうち76%を占めているという。
米国で新規に上場するバイオベンチャー数は、01年から03年までは一桁台で推移していたが、04年32社、05年17社、06年24社と景気回復と連動するように増加した。バイオ産業全体の総収入は年々着実に伸びている。
収益面では、バイオ産業全体で見れば赤字続きで利益を生み出してはいない。しかしここ数年、投資額が増えている背景として上田氏は、[1]個別にみれば多くの成功事例がある[2]長期的にみるとバイオ産業は大きく成長していく――などの考えに基づくものと紹介。08年からはバイオ産業全体としても初めて赤字を脱し、利益がプラスに転じるとの見方があると話した。
大手製薬会社も、バイオベンチャーの技術や医薬品を積極的に導入している。上田氏は、大手製薬会社にとっては、[1]変化の激しいバイオ技術・人材は、内部に抱えるよりベンチャーから必要な時期に買った方が得策[2]パイプラインが先細り、バイオベンチャーからの新薬候補の調達が戦略上必要――などのメリットがあると解説。一方、バイオベンチャーも資金調達のため大手製薬会社との連携が不可欠であり、両者の共存関係が成り立っているとした。
特に最近は、「良い技術を持っている企業があれば、技術だけではなく会社ごと買ってしまおうという傾向が強まっている」と上田氏は指摘。バイオベンチャー側も、新規に上場するより買収された方が利益が大きいとして、「大手製薬会社に買収されたがっているとの報道がなされている」と解説した。