厚生労働省は12日、医療費の患者負担を一定水準に抑える「高額療養費制度」をめぐり、70歳未満の一般所得者を中心とした月額上限引き下げと、年間上限の導入の具体案を、社会保障審議会医療保険部会へ提示した。
高額療養費の見直しは、社会保障・税一体改革成案に基づいて、長期に高額な医療にかかっている患者の負担を軽減することが目的。
70歳未満については、現行だとサラリーマンで年収210万~790万円程度の層を一般所得者として一律に月8万0100円の基準額を設定している。厚労省案ではこれを3類型に分け、年収300万円以下で月4万4000円、年収300万~600万円の層で月6万2000円に基準額を引き下げ、600万円以上の層は月8万円とする。さらに年収300万円以下の層では、上限を過去3カ月連続で超えた場合の4カ月目(多数該当)の基準額を現行の4万4000円から3万5000円に見直す。
年収790万円超の上位所得者と住民税非課税の低所得者の限度額は若干低くするが、大きくは変えない。
このほか、一般所得者と上位所得者に求めている医療費の1%相当額の負担を廃止し、青天井の仕組みを改める。
年間上限は、実際にかかった患者負担の合計が基準額を超えた場合に、超過額を保険者から事後払いする考え方。金額水準は、多数該当の場合の月額上限の12倍を基本とする。
ただし、一般所得者のうち年収300万円以上の層は基本値から5%減額した50万1000円とする。また、300万円以下の層は10%を減額し、300万円以下一般所得者で37万8000円、低所得者で25万9000円を設定する。
70歳以上についても、70歳未満と整合を図る形で、所得区分ごとに取り扱いを見直す。
厚労省によると、高額療養費の支給対象となる患者の約3~6割が、年間のうち4カ月以上にわたって月額上限に該当し、このうち約4~6割は10カ月以上にわたって上限に達しているという。厚労省案に必要な財源は給付費ベースで3600億円となる見込み。