日本医療機能評価機構が発表した「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」の2010年年報によると、薬局の“ヒヤリ・ハット事例”は調剤時に最も多く発生し、特に数量間違い、規格・剤形間違い、薬剤取り違えが多いことが分かった。昨年1年間に582薬局が報告した合計1万2904件をまとめた。
薬局ヒヤリ・ハット収集は一昨年4月から開始したため、12カ月分の本格的年報は今回が初めて。参加薬局は毎月増加しており、昨年末には年初の2倍近い3449薬局が登録している。事例の月間報告数は1月の140件から7月には2051件まで増え、その後、減少している。
報告事例は、調剤関連が1万2222件で全体の94・7%を占め、次いで疑義照会の656件が多く、特定保険医療材料は23件、医薬品販売は3件だった。
調剤関連の主な内容は、数量間違いが4877件、規格・剤形間違いが1614件、薬剤取り違えが1372件、調剤忘れが701件、薬袋の記載間違いが677件、分包間違いが335件などで、「その他」として報告された事例では、レセプトコンピュータの入力間違いが多かったという。
また、実際に誤った処方調剤を患者に交付した事例が1996件あり、このうち軽微な治療を要したものが168件、治療には至らなかったものが880件で、948件は不明となっている。
疑義照会に関する事例では、仮に変更前の処方通りに服用した場合、患者に健康被害が生じたと推測されるものが46%を占めた。変更した内容は、薬剤179件で最も多く、分量104件、薬剤削除96件、用法78件、用量74件と続いた。疑義の判断材料は、「処方箋のみ」が46・3%、「処方箋と薬局で管理している情報」が29・6%、「その他」が24・1%だった。
複数回答で発生要因を調べると、「確認を怠った」が1万1478件と際立って多く、次に「勤務状況が繁忙だった」の2830件が多かった。
また、同機構は[1]名称類似[2]薬効類似[3]ハイリスク薬[4]一包化[5]疑義照会[6]個別薬剤――の観点から事例を分析した。
[1]名称類似は、調剤時の薬剤間違え事例の10・5%に当たる144件で医薬品の販売名の頭2文字が一致し、18・8%に当たる258件で頭3文字以上が一致していた。
[2]薬効類似は、薬剤取違えの26・5%に当たる364件が該当した。外皮用薬の「その他の鎮痛、鎮痒、収斂、消炎剤」、感覚器官用薬の「その他の眼科用剤」で多かった。
[3]ハイリスク薬に関する事例は1467件で、医薬品数としては379品目だった。
[4]一包化に関する事例は360件で、調剤絡みが346件、疑義照会が14件だった。調剤では分包間違い、調剤忘れ、数量間違いが多かった。
[5]疑義照会については、分量変更の薬効で抗生物質製剤が最も多く、特に0~10歳の患者に散剤を処方した事例が多かった。
[6]個別薬剤では、抗癌剤に該当する事例が74件、テオフィリン製剤が56件だった。