社会保険診療報酬支払基金は、審査支払制度の見直しに関する要望を厚生労働省保険局長に提出した。現行は処方箋か被保険者証のいずれかで行っている保険薬局による患者の資格確認を、医療機関と同様に「原則として、被保険者証で患者の受給資格を確認しなければならない」と見直すことなどを盛り込んだ。
支払基金によると、資格誤りを理由とする調剤レセプトの返戻は、2010年度で約147万件に達する。医療機関が資格情報を処方箋に誤って転記したために、返戻となったと推測される事例もあるため、支払基金は、薬局での資格確認を被保険者証に統一することで、調剤レセプトの資格誤りを減らしたい考えだ。
このほか支払基金は、レセプト審査に不服があっても、再審査等の申し立てを行わなければ提訴できない「不服申立前置」の法制化を検討するよう提言している。
埼玉県の診療所が支払基金を相手取った訴訟を起こしたところ、さいたま地方裁判所の判決で「再審査の手続きによらずに訴訟で診療報酬を請求することを妨げない」との判断が示された。これに対し支払基金は、「支払基金の審査結果に対する不服申し出は、まずは、再審査請求によるべき」と主張していた。
今回の要望では、提訴が頻発すると「『適正な審査』および『迅速な支払』という審査支払制度の趣旨が没却されてしまう」と指摘している。また、「いつまでも再審査等の申し出を可能とし、その相手方となる保険者または医療機関を法的に不安定な地位に置くことは、適当でない」との認識を示し、申し出期限の法定も求めた。