「退院時カンファレンス」は、入院から在宅へ切れ目のない緩和ケアを提供するために重要だが、カンファレンスに参加する薬局は約1%と少なく、依然として取り組みが進んでいない実態が明らかになった。在宅療養支援診療所などと連携する薬局も2割にとどまり、在宅に取り組む多くの薬剤師が、「カンファレンスへ参加できない」「患者に関する情報提供が少ない」などの悩みを抱えていた。東京都によるがんの緩和ケア提供体制の実態調査報告書で分かった。
調査は、「東京都薬局機能情報提供システム」で、「麻薬に係る調剤の実施」をしている薬局3432軒を対象に実施。2703軒から有効回答があった。
癌患者に対する退院時カンファレンスへの参加実績は、「あり」が36軒と、全体のわずか1・3%で、制度はあるものの、実際に開局薬剤師が病院に出向いて連携を取ることの難しさが浮き彫りとなった。
薬局が連携している他の医療機関では、「連携している在宅療養支援診療所がある」が約2割、「訪問看護ステーションがある」も約1割と、連携医療機関がある薬局は少数だった。
他の医療機関との連携で、薬局サイドが難しいと感じることは、「カンファレンスに参加できない」が最多。そのほか、▽在宅医療への参画が難しい▽患者に関する情報提供が少ない▽人手不足で連携の時間が取れない▽麻薬の在庫管理・流通--などが挙がった。一方で、薬局自身が在宅緩和ケアの推進に必要と考えるのは、「学習会等によるスキルアップ」で、知識の向上を必要としていた。
オピオイド製剤は、7割の薬局が取り扱っていった。取り扱いのない薬局は、「該当患者がないない(需要がない、処方箋がこない)」が半数を占め、▽在庫がない▽人手不足▽別店舗へ紹介▽基幹病院が使用していない--などを理由として挙げている。
オピオイド製剤の取り扱いのある薬局での平均調剤件数は、1カ月で「0件」「1件以上2件未満」がそれぞれ2割あり、取り扱い体制はあっても、調剤実績はほとんどないという結果だった。製剤としては、▽デュロテップMTパッチ(56・1%)▽MSコンチン錠(62・4%)▽オキシコンチン錠(72・2%)▽オプソ内服液(57・9%)▽オキノーム散(57・7%)--などで、これ以外の製剤の取り扱いは少なく、特に注射薬は極めて少なかった。
無菌調剤の実施は全体の1割未満にとどまった。未実施の理由としては、「設備がない」が半数を占め、そのほか「該当患者がいない」などの理由だった。
訪問服薬指導は、約3割で行っていたが、09年度の年間服薬指導件数では「0回」が5割、「1回以上5回未満」が1割だった。このことからも、訪問服薬指導の体制はあっても、実際にはオピオイド製剤の服薬指導実績はほとんどない薬局が多いことが分かった。
麻薬調剤を実施している薬局の平均職員数は4・32人だった。