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厚生労働省の「次期治験活性化計画策定に係る検討会」は23日の会合で、「新たな治験活性化5カ年計画」の最終案を審議、概ね了承した。昨年末に示された素案に、パブリックコメントの意見を反映させたもの。国内での治験や臨床研究を活性化させるための課題について、具体的な数値目標を示した重点的取り組み事項(アクションプラン:AP)では、素案段階で決められなかったCRC配置の目安について、治験責任医師1人当たり0.5人以上またはCRC1人当たり年間担当計画数が708件程度とされた。
新5カ年計画は、国民に質の高い最先端の医療が提供され、国際競争力強化の基礎となる医薬品等の治験・臨床研究実施体制を確保し、日本発のイノベーション創出を目指すことを目的に、[1]治験・臨床試験のコスト、スピード、質を米国等諸外国並みに改善[2]国際共同治験の実施数をアジア周辺国と同等以上の水準までに向上[3]質の高い最先端の医療の提供を確保し、国民が安心して治験・臨床研究に参加することができる体制が確保されている‐‐の目標に掲げると共に、中核病院・拠点医療機関が5年後に目指すべき改善指標を設定。進捗状況を適宜評価することを明記した。
目標を具体化するためのAPでは、▽中核病院・拠点医療機関の体制整備▽治験・臨床研究を実施する人材育成と確保▽国民への普及啓発、参加促進▽治験の効率化、企業負担の軽減▽その他の課題‐‐の5課題について、具体的な数値目標等を示している。
このうち、体制整備に関しては、中核病院・拠点医療機関として40カ所程度整備する。中核病院については厚生労働科学研究臨床研究基盤整備研究で、2006年度5カ所の助成を、07年度は10カ所程度に拡大。拠点医療機関についても30カ所に助成する方針などが示された。また、中核病院・拠点医療機関・橋渡し研究拠点として、文部科学、厚労両省の事業で選定された医療機関・大学等については、07年度以降、共通のネットワークを構築し、互いに協力し、臨床への橋渡し研究や治験・臨床研究の計画が実施できるようにすることを目指していく。
人材育成では07年度から、治験・臨床研究を普及するため、厚生労働科学研究費等の交付割合を基礎研究から治験・臨床研究へシフトする。公的な研究費で行われる臨床研究の採択に際しては、生物統計家の参画も配慮することが明記された。
一方、「中核病院・拠点医療機関におけるCRCの配置目標」については、日本医師会治験促進センターが実施した調査結果で、「CRCが業務時間内に終了することができている」「業務量を適当と感じられる」治験計画数が年間708件程度であり、9件を超えると過多と感じられていることが分かった。
これを受け、APではCRCの配置目安を▽治験責任医師1人当たり0.5人以上▽CRC1人当たりの年間担当計画数が708件程度””のいずれかにすることが明記された。
このほか、医師等の養成課程で治験・臨床研究に対する教育機会の確保・増大を図ることや、薬剤師、看護師、臨床検査技師など専門職全般の養成について、治験・臨床研究、生物統計、研究倫理などの教育を充実させることも盛り込まれた。
一方、「国民への普及啓発、参加の促進」では07年度から、臨床研究登録データベースのポータルサイトの提供、被験薬承認情報のフォローアップ、情報公開の実施、患者向け相談窓口機能の設置を促す。また「効率化、企業負担の軽減」では、07年度より治験関係書類のモデル書式などの効率化を関係医療機関団体や製薬企業団体に促す一方で、11年度までに中核病院・拠点医療機関で共通化された治験関係書式の使用や、治験データのIT化、医療機関の治験受託に関する窓口の一元化、出来高払い・契約未了症例の返金等契約の改善を促すとしている。
計画はこの日の議論を踏まえて一部修正の上、4月から実施に移される。