薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は13日、中外製薬が申請していた、遺伝子組み換えヒトエリスロポエチン製剤「エポジン」の、「癌化学療法に伴う貧血」に対する効能追加について、「承認することは適切でない」との結論をまとめた。生命予後の悪化などのリスクが、ベネフィットを上回ることなどが理由。同剤は、薬事分科会の審議扱いとなったため、今後、1カ月間募集するパブコメの意見を踏まえ、9月の薬事分科会で再度審議する。
中外製薬は2009年11月19日、腎性貧血に用いられている「エポジン注シリンジ24000、同36000」(一般名:遺伝子組み換えエポエチンベータ)について、「治癒切除不能な固形癌患者における癌化学療法に伴う貧血」の効能を追加する承認申請を行っていた。
癌化学療法では、骨髄抑制などによって貧血が起こるケースが見られるが、日本では赤血球輸血しか治療手段がなく、同剤が承認されれば治療の選択肢が増えるとされていた。
この日の部会では、赤血球造血刺激因子(ESA)製剤の投与により、▽癌患者では生命予後の悪化▽腫瘍増殖の促進--といった、重要な副作用リスクの懸念が報告されている点を指摘すると共に、現時点では、投与対象患者をHb濃度等で限定するなど、厳格な管理を行っても、このリスクを回避できることは示されていないとした。
その上で、「癌患者の延命効果、腫瘍増殖の抑制等を目的とする癌化学療法と併用されるにもかかわらず、現時点では、生命予後の悪化および腫瘍増殖の促進を引き起こす懸念がある」とした。
委員からは、患者の同意を得た上で使用してはどうかといった意見も出たが、最終的にはリスクがベネフィットを上回ると判断し、効能追加の承認を見送った。
分科会で審議扱いとなった品目は、「薬事分科会における確認事項」に基づき、社会的関心の高い医薬品として、原則としてパブリック・コメントを実施することになっている。準備が整い次第、1カ月間パブコメを募集する。