薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は5月30日、9品目の新薬や効能追加を審議し、薬事承認を了承した。国内2番目となるMSDのヒトパピローマウイルス(HPV)感染による子宮頸癌予防ワクチン「ガーダシル」、グラクソ・スミスクライン(GSK)の国内初のロタウイルスによる胃腸炎予防ワクチン「ロタリックス」が登場し、中外製薬の抗癌剤「タルセバ」への膵癌の適応が追加される。いずれも、1カ月後をメドに正式承認される見通し。
▽タルセバ錠25mg、同100mg(中外製薬):エルロチニブ塩酸塩を有効成分とし、治癒切除不能な膵癌の効能・効果を追加した。
同剤は、ゲムシタビンと併用する。承認条件として、▽全例調査▽治療に精通した医師の下での使用――が付いた。再審査期間は残余の2015年10月18日まで。膵癌の適応では、海外76カ国で承認されている。
膵癌への適応追加は、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」(未承認薬検討会議)で要請されていた。
▽ロタリックス内用液(GSK):経口弱毒生ヒトロタウイルスを抗原とするワクチン。ロタウイルスによる胃腸炎の予防を効能・効果とする。
同剤は、乳幼児が感染するロタウイルスによる胃腸炎の重症化を防ぐためのもの。生後6週から24週までに2回接種を行う。2回目は初回接種から4週間空ける。
臨床試験では、2歳児までの予防効果が認められている。再審査期間は8年。海外115カ国で承認(凍結乾燥製剤含む)されている。
▽アレロック顆粒0・5%(協和発酵キリン):オロパタジン塩酸塩を有効成分とし、効能・効果はアレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患に伴う掻痒。小児用量(2~6歳)や、顆粒剤の剤形を追加した。再審査期間は4年。海外では小児用量の承認はない。
▽ゾリンザカプセル100mg(MSD):新有効成分のボリノスタットを含有し、皮膚T細胞性リンパ腫を効能・効果とする。オーファン指定されており、再審査期間は10年。海外20カ国で承認されている。既存薬の「オーガンマ」が10年4月に供給停止し、国内に有効な治療薬がなくなったため、未承認薬検討会議で開発要請の対象品目となっていた。
▽ガーダシル水性懸濁筋注、同注シリンジ(MSD):組み換え沈降4価HPV様粒子(酵母由来)を抗原とする子宮頸癌予防ワクチン。
類薬のサーバリックスはHPV16、18型の感染による発病を抑えることで、子宮頸癌の7割程度を予防する効果が期待されているが、同剤は6、11型にも対応しており、尖圭コンジローマの予防も効能・効果に持つ。接種は初回から2カ月後、6カ月後の3回。サーバリックスと同様に、筋肉内注射による血管迷走神経反射が懸念されるため、接種後30分程度は被接種者の状態を観察する。再審査期間は8年。海外承認は130カ国。
▽オンブレス吸入用カプセル150μg(ノバルティスファーマ):新有効成分インダカテロールマレイン酸塩を含有する慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬。長時間作動型β2刺激薬で、類薬にセレベントがある。即効性と持続性があり、1日1回投与で済む。効能・効果はCOPD(慢性気管支炎、肺気腫)の気道閉鎖性障害に基づく諸症状の緩解。再審査期間は8年。海外承認は50カ国。
▽ヒュミラ皮下注40mgシリンジ0・8mL、同20mgシリンジ0・4mL(アボット・ジャパン):有効成分はアダリムマブ(遺伝子組み換え)。既存治療で効果不十分な多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎の効能・効果を追加すると共に、20mg規格を新たに承認する。類薬にアクテムラ、エンブレルがある。海外承認は50カ国。
▽キュビシン静注用350mg(MSD):新有効成分のダプトマイシンを含有するリポペプチド系抗生物質。グラム陽性菌の細胞質膜に作用し、細胞機能不全を引き起こし、細菌を死滅させる新規作用機序を持つ。効能・効果は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌による敗血症、感染性心内膜炎、深在性皮膚感染症、外傷・熱傷・手術創等の二次感染、びらん・潰瘍の二次感染。再審査期間は8年。海外承認は71カ国。承認条件として感受性調査を求める。
▽ジスロマック点滴静注用500mg(ファイザー):アジスロマイシン水和物を有効成分とするマクロライド系抗生物質。既存の錠剤に注射剤が加わることで、注射剤で治療を開始した後に錠剤へ切り替える「スイッチ療法」が可能になる。類薬にエリスロマイシンがある。再審査期間は6年。海外承認は54カ国。
3品目の一変を報告
またこの日の部会では、次の3品目の一変などが報告された。
▽スプリセル錠20mg、同50mg(ブリストル・マイヤーズ)=ダサチニブ水和物を有効成分とするチロシンキナーゼ阻害剤。従来は慢性骨髄性白血病に対して、グリベック(一般名:イマチニブ)が効かない患者のみを対象としているが、効能・効果から「イマチニブ抵抗性」の条件を外すことで、一次選択薬として使用できるようにする。
▽ジスロマック錠250mg(ファイザー)=アジスロマイシン水和物を有効成分とするマクロライド系抗生物質。注射剤の追加に合わせて、適応菌種にレジオネラ・ニューモフィラを加える。
同菌に対して注射剤を使用せず、同剤のみで治療した場合の有効性・安全性は確立していない。
▽注射用ノボセブン1・2mg、同4・8mg、ノボセブンHI静注用1mg、同2mg、同5mg(ノボノルディスクファーマ):有効成分はエプタコグアルファ(活性型)(遺伝子組み換え)で、グランツマン血小板無力症患者の出血傾向の抑制の効能・効果を追加する。既に同部会で適応拡大の公知申請について事前評価を済ませていた。