内閣官房の医療イノベーション推進室(中村祐輔室長)は25日、日本発の医療技術開発に向けて、目指すべき方向性をまとめた。創薬スクリーニング、創薬化学、薬剤開発を推進する「創薬支援機構」構想や、癌ワクチン、核酸医薬品、再生医療製品などの評価方法の標準化を行う「先端的医薬品医療機器評価技術開発センター」を創設する方針を打ち出した。来年度予算に反映させるため、6月に開く医療イノベーション会議へ提出する。
推進室では、▽医薬品▽医療機器▽再生医療▽個別化医療▽レギュレーション▽知的資産――の各ワーキングチームで、今後の目標を検討した。親会議で認められれば、関係省庁と概算要求を調整することになる。
医薬品をめぐっては、短期的には基礎から臨床試験につながる段階の支援体制を充実させ、長期的には創薬支援機関の設立やグローバル臨床試験の推進体制を強化する。来年度予算では、創薬支援機構を創設するほか、アカデミックCROを推進して、世界で通用する臨床試験拠点を整備する。癌や認知症分野で、GCP準拠の臨床試験も進める。
医療機器は、短期的には実用化促進のための制度改正や、中小ものづくり企業の技術力を生かした医療機器の創出などに取り組み、長期的に薬事法外の機器開発も促して、海外に輸出できる国際競争力の高い産業へ発展させる。来年度予算では、東日本大震災の被災地域での開発支援加速プロジェクトに取り組む。
再生医療では、当面は3年で治験開始が有望なテーマを重点に支援し、長期的には新たな法的枠組みを構築し、再生医療ビジネスモデルを確立する。来年度の支援対象には体性幹細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞や周辺装置開発を挙げた。GMPに対応したCPCセンターも創設する。
個別化医療については、短期的な目標として、▽ナショナルレベルのバイオバンク整備▽ゲノム情報と医薬情報の統合データベースの整備▽個人のDNA情報の差異や、生活習慣関連因子と病気とのつながりを解析して医療に活用するメディカルインフォマティクスセンターの整備--などを設定。
医療関連情報のIT化を促進するインフラや、法整備に必要なコストを2012年度の予算要求に反映させる。
レギュラトリーサイエンスでは、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の正規職員による審査・相談体制の強化(薬事戦略相談、革新的新薬の特別審査ルート、再生医療製品・ワクチンなどの生物系審査・相談体制拡充な)に取り組む。「先端的医薬品医療機器評価技術開発センター」は、実験科学系(ウェット系)の連携の観点から、国立医薬品食品衛生研究所に設置することを想定している。
知財関係では来年度、税制優遇措置の拡大を求める。