医療用医薬品製造販売業公正取引協議会は19日、MSDによる4件の金銭提供、旅行招待が、公正競争規約違反行為に当たるとして、「厳重警告」措置を行ったことを公表した。インターネットによる症例報告の収集など4件の事案を、不当な金銭提供による違反と認定。昨年8月に旧万有製薬が警告を受けたにもかかわらず、同様の違反行為が行われていたことから、社内コンプライアンス体制の抜本的改善を求めた。20日に記者会見した岩淵恒彦専務理事は、「これまで、警告後も同様の違反行為をしていたケースはなかった」と厳しく指摘した。厳重警告は、2000年の旧協和発酵による枚方市民病院前院長の接待事案以来、4件目となる。
メーカー公取協は、昨年8月の警告後も、MSDが同様の違反行為を行っていると情報を得て、調査を進めた結果、▽インターネットによる症例報告収集▽豪州での医師向け研修会▽ワクチンに関する2会合▽脂質に関する会合--の4件を公競規違反と認定した。
MSDは、症例報告の収集で、医師が入力した血圧値、検査結果データの対価として、商品券を提供。ワクチンと脂質に関する会合でも、役割のない参加医師に謝金を支払っており、これらが処方を誘引する不当な金銭提供と認定された。また、若手糖尿病専門医を派遣した豪州の研修会で、謝金と旅費・宿泊費などを負担したことが、不当な金銭提供、旅行招待と認定された。
これら4件の事案について、同協議会は「調査・研究委託、仕事の依頼の対価として、金銭を提供したかのような形を取っているが、実体を伴っていない」と指摘。昨年8月の警告と同様の事案も見られたため、さらに厳しい「厳重警告」措置を行った。その上で、MSDの社内コンプライアンス体制を抜本的に改善することを求めた。岩淵氏は、「会合の企画は、社内コンプライアンス部門がチェックするのが普通。それが行われず、同じことが繰り返された」と指摘した。
MSDが是正策
一方、MSDは、厳重警告を受けて都内で会見し、社内コンプライアンス専門家の外部アドバイザー登用など、4項目の是正策を示した。トニー・アルバレズ社長は、「昨年8月の警告から1年も経たず、再び同様の違反が繰り返されたことに重大な責任を感じる。今回の措置を厳粛に受け止め、二度とこのようなことが起こらないよう、コンプライアンス体制の立て直しと社員の行動改革に全力で取り組みたい」と謝罪した。
なお、MSDは厳重警告を受け、メーカー公取協の理事職を辞任した。